有機化学系の事故、ぼや、かぶれはなぜ発生するのか?具体例とともに解説してみた

有機系の発火・爆発事故
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理系とーく代表。名大工学部卒。Ph.D. 名大大学院博士課程卒。有機化学、天然物合成。趣味はブログとボルダリング。最近、バーみたいなコワーキングスペースを始めました。

どうも、ともよしです。

今日は、有機系研究室で起こる事故、ぼや、かぶれについてお話します。

化学の知識をあまり持ってない人でも楽しめるように書きます。

  • 水に触れると発火しる試薬
  • 可燃性気体による爆発
  • 衝撃で爆発する試薬
  • かぶれやすい試薬

以上の内容でお話していきたいと思います。

 

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禁水性試薬による発火

まずは、水に触れると発火してしまうという反応性に富んだ試薬(≒禁水性試薬)を紹介しましょう。有名な禁水性試薬は以下。

  • 水素化ナトリウム
  • 水素化アルミニウム
  • t-ブチルリチウム

 

水をかけると発火する

NaHで表される水素化ナトリウム、LiAlH4で表される水素化アルミニウム(lithium aluminium hydride; LAH)は、中途半端な量の水をかけると発火する、という粉状の個体。

水素化ナトリウムと水素化アルミニウムリチウムは、水と反応すると、水素を発生します。この時、水素化ナトリウムと水素化アルミニウムリチウムの反応性が高いゆえに、大きな熱が発生するので、そのスケールが大きい場合には火が出ます。

水素化ナトリウムと水素化アルミニウムリチウムの反応性としては、空気中の水分と少しずつ反応し発熱するくらい。長時間おいておくと発火する可能性があります。

 

試薬がついた薬包紙は適切に処理しないと発火する

有機系の研究室では多くの場合、水素化ナトリウムや水素化アルミニウムリチウムを薬包紙で量り、フラスコに投入します。この時、試薬が付着した薬包紙を放っておくと薬包紙に引火し、ぼやさわぎになることがあります。

禁水性試薬と薬包紙による発火を防ぐためには、試薬のついた薬包紙を、水をためた入れ物に勢いよく投入する、という方法がよくとられます(水が大量にあれば発火しにくい)。

 

t-ブチルリチウムは、空気に触れただけで発火する

t-ブチルリチウム(たーしゃりーぶちるりちうむ)(ヘキサン溶液として売られている)については、空気に触れただけで発火します。t-ブチルリチウムは空気に触れると発火するので、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で扱わなければいけません。

ある程度利用頻度がある試薬の中では、トップレベルで「できれば使いたくない」と思う試薬ですね。

 

可燃性気体+着火源

可燃性の気体がある程度の濃度で存在しているとき、着火源(電気製品で発生するスパーク、熱源、火)が近くにあると引火します。

可燃性気体はたくさんありますが、よくありそうなところでは、蒸発した有機溶媒、水素などです。

対策は、着火源を使うときに周りに可燃性気体がないか確認する、という方法。着火源はなるべく少なくする方向で考えたほうがいいです。

 

過酸化物による爆発

過酸化物は、高エネルギーなO-O結合(酸素-酸素結合)を持っているため、衝撃によって爆発することがあります。

  • mCPBA(m-chloroperbenzoic acid; メタクロロ過安息香酸)
  • 古くなったジエチルエーテル
  • 過酸化水素

以上が過酸化物の有名どころ。衝撃を与えたり、濃縮して高濃度になったりしただけで爆発します。

 

かぶれ

試薬、有機溶媒、ゴム手袋など、さまざまなものでかぶれが引き起こされます。

ただ、かぶれやすさには個人差がかなりあります。ぼくは割りと強い方みたいで、とくにかぶれません。人によっては、遠くで試薬瓶のフタをあけただけで反応する人もいるみたいです。

自分にあうゴム手袋を使う、試薬をドラフトチャンバー(空気を吸い続けてくれる装置)内で使う、等の対策が考えられます。

 

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今日のとーく

いかがでしたでしょうか。有機化学を扱う研究には、たくさんの危険が潜んでいます。

今日紹介した事故をおこさないためには、日頃から十分に対策をとっておく必要があります。そして、事故防止のためには、それなりの化学の知識が必要となってくるため、日々の勉強が大切なんだと思いますね。

要望があったところを中心に、詳細説明を別記事で書いていこうと思うので、疑問点がありましたら、Twitterかコメント欄にてメッセージを送ってください!

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