曇りの日の方が日焼けしやすいってホント?実は「油断」以外の理由がある

どうもこんにちは。毎週末テニスして、毎週末黒ずんでいくさるぽてです。

近年では毎年毎年地球は暑くなっているのではないかと思わずにはいられませんが、日焼け対策もしっかりしないともはや火傷みたいになりますよね。

今回はその日焼けの話なのですが、その中でも「曇りの日でも意外と日焼けする」っていう説についての記事です。

 

曇りの日ってあんまり太陽の光は眩しくないし、日差しがきつい感覚もない。
「まあいっか」って気持ちで日焼け対策を怠ったりしちゃいますよね。

それどころか「むしろ曇りの日の方が(晴れの日より)紫外線が強い」みたいな噂も聞いたことありませんか。
ストーリーは後述しますけど、職場のテニス部のおばちゃんは完全にそう信じていましたね。

今回の話はこの噂について調べたり考えたりしてまとめたものです。
結論から言うと、
・「曇りの日の紫外線>晴れの日の紫外線」という原則にはならない。
・ただし、日焼けしやすいというのはその通りで、「意外と紫外線が強くて油断した」以外にれっきとした理由はある。晴れの日とはまた違った意識が必要。

順を追って書いていきます。

関連記事:それでも引きこもるの?我々は太陽に生かされているのだ!【超やさしい光合成のはなし①】

 

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曇りの日でも日焼けするのは今や共通認識

「曇りの日でも意外と日焼けする」・・・。これは現代人にとってはもはや共通認識ですよね。
現代人は学校でもオゾン層破壊問題の授業を受けており、昔の人よりは日焼けに対してアンテナが張られていると思います。

「曇りでも日焼けするんやで」
と言って、
「そんなわけないやろ、ばっかでーい!」

と突っぱねる人の方が少ないんじゃないですかね。

試しに、「曇り 日焼け」 とかでググってみてください。
・曇りでも日焼けする!
とか
・曇ってても意外と日焼けしやすい!
とかって解説記事が溢れていると思います。

そういった記事にも書いてありますけど、この曇ってても日焼けする原因は紫外線が雲には吸収されず透過してくるためです。

実は雲は紫外線を遮ってはくれないので油断しているとこんがり焼けちゃうわけですね。

「いやー、でも曇りの日って光が当たってる感覚もないのに信じられんわ・・・」という人は”赤外線”について一緒に考えてみましょう

まあ、信じられない気持ちもわかります。
むしろ普通に世の中の解説記事を読んで「え、曇ってても紫外線は強いんですか。そうなんですね!」と納得している人も、「そういうもの」として飲み込んでいるだけだったりすると思います。

冷静に考えて見ると、曇ると確実にあの太陽の暖かい感覚は弱くなっているのに紫外線はほとんど通過してきているだなんて・・・と自分の五感とのミスマッチをどう考えればいいのかよくわからなくなるのも当然ではないでしょうか。

この五感とのミスマッチの正体は、日焼けの原因となってる紫外線と、太陽光に大量に含まれる赤外線とをごっちゃにしているためだと思われます。

つまり、太陽光には色んな波長の光が含まれていますが、このうち日焼けに関与しているのはご存知の通り比較的波長の短い紫外線です。
一方日光浴したくなる温かい光というのは紫外線とは全く異なる、比較的波長の長い赤外線です。

じゃあ曇りの日は紫外線は透過してきているが赤外線は雲に吸収されている・・・?

・・・それはそうでしょうね。

雲の主成分は水ですから。水といえば赤外領域に吸収を持ちますが、紫外領域には吸収がありません。

そのため、例えば曇りの日に水の入ったペットボトルを置いておいても水を温める赤外線は届きませんからそれほど温水にはならないですが、
紫外線は雲に吸収はされていないので沢山降り注ぐわけです。

曇りの日は太陽光で熱を感じないのに日焼けする原理は上記のところにあるのではなかろうかと思います。

 

光の性質と日焼けの関係については↓の記事にまとめました。

日焼け止めのSPFとPAの違いって?光の性質の基本から解説」(個人ブログ「ぽてはじめ」に飛びます)

元々は日焼け止めの性能についての記事ですがより詳しく知りたい方はどうぞ。

 

 

曇りの方が紫外線は強くなる?・・・いやいやいや、そんなバカな。

さてさて、このように曇りの日にも日焼けするわけですが、人によっては「曇りの日の方が(晴れの日より)紫外線が強い」と考えているようです。

先日、職場のテニス部のおばちゃんも曇りの日にたっぷりと日焼け止めを塗り直していて、「入念ですねえ」と声をかけたところ、
「あら、曇りの方が紫外線強いんだから今日みたいな日こそ日焼け対策は大事なんですよ〜?さるぽて君も若いからって油断してちゃだめよ〜」
と言って普段僕が使う量の3回分くらいをベチョ〜っと腕に落としてもらいました。

さるぽて
「(ベチョ〜っ)え・・・。あ、ありがとうございます。へー、曇りの方が強いんですか、意外ですね。。。」

意外も何も、内心は(いやいや、そんなわけはなかろう)と思っていたんですけど。

だってそうですよね。
晴れと曇りの違いって雲の有無じゃないですか。雲があると紫外線が強くなるなら、エネルギー増幅器の完成ですよ。
紫外線はエネルギーの高い光ですから、なんでも雲を通せば無限にエネルギーを増やせます。エネルギー問題解決の救世主です。

・・・とまあそんなはずもなく、実際に晴れの日と比べて紫外線の量はしっかりと曇った日なら六割くらい、雲の薄い日でも8〜9割程度になるようです。


気象庁HPより抜粋です)

紫外線は雲に吸収されないとは言っても、真っ直ぐ地表に到達できる紫外線の量は減少します。

というわけで曇りの日の方が紫外線強いはウソ、曇りの日に日焼けしやすいのは皆油断したちゃってるだけさ、QED!
・・・とは行きません。

実はこのグラフにも答えの一部が反映されているのですが、雲りならではの日焼けしやすい要因が存在します。

 

キーワードは「光の散乱」、そこから生まれる二つの日焼け要因

実際に「曇り 日焼け」ってググってネットサーフィンした方なら既にご存知かもしれませんが、曇りの日焼けを考える際には「光の散乱」を考える必要があります。
「光の散乱」と言うのは文字で大体意味がわかるかもしれませんが、指向性を持って一直線に進んできた光が散乱体に当たることで、様々な方向に散らばって進み直す現象です。
今回はその散乱体が雲というわけですね。

紫外線は雲に吸収されないくせに曇りの日に紫外線量が弱まるのはこの散乱が主な原因でしょうね。

ところが・・・矛盾するようですがこの光の散乱により曇りの日に日焼けしやすい要因が生じます。

 

1、快晴の日より紫外線量が増える条件が存在する

実はいっちばん紫外線量がきつくなる日はどう言う日かというと、快晴の日ではなく、少し雲がある日のようです。

「いや、さっき雲りの方が紫外線量弱いって結論でてたやんけ・・・」

それはそうなんです。平均値を考えれば快晴の日が一番紫外線量が多いのは気象庁HPの通りです。
ですが、そのグラフ、もう一度よく見てみてください。特に「晴」と「薄雲」の日のエラーバーの部分・・・。

確かに総合的には「晴」や「薄雲」の日は「快晴」より弱いけど、どうもエラーバーを見ると100%を超える日(快晴より紫外線が強い日)があるらしい。

これ、ちょっと雲があった方が太陽の調子がいいとかじゃないです。散乱光を念頭においた上で、下の図を見てもらえれば一発で理解できると思います。

つまり、太陽と自分の間には雲はないけど、周りに雲がある日というのは、直射日光(快晴の日とほぼ同じ量)が来るのに加え、雲による散乱光が周辺の雲から合流してくるんですね。

条件はかなり限られてきますが、でも時々太陽が顔を覗かせる曇りの日とかありますよね。
こういう日は特に紫外線が強いわけですから、日焼けしやすいでしょうね。

 

〜ネットで見かける怪しい解説〜

少し脱線になりますが、この話についてはネットでもいくつか記事が出ています。ただ、時々過程の部分で怪しい解説があります。

・雲があるとそこで光の散乱が起こる
・光の散乱は波長が短いものほどしやすい。空が青いのも同じだよ。

→紫外線は特に散乱しやすい。雲り、危ない。

と解釈できるものがちらほらあります。ですが、このロジックは成り立ちません

詳しい説明はここではしませんが、一口に「散乱」と言ってもいくつか種類があります。

空が青く、夕焼けが赤く見えるのは「レイリー散乱」というごくごく小さな空気中の微粒子等で起こる散乱で、波長が短いほど散乱しやすい現象です。
雲のようなもう少しサイズの大きな成分で起こる散乱は「ミー散乱」というもので、これは波長の長さに依存しません。(どの光も均等に散乱する結果雲は白く見えるんですけどね)

もちろん直射日光以外の散乱光にはレイリー散乱も含まれているので紫外光が散乱しやすいっていうのは本当なんですけど、
雲における散乱についてはまた別の話だとということを付け加えておきたいと思います。

 

2、防ぎにくい角度から紫外線を浴びる

この散乱光を考慮した紫外線の降り注ぎ方を考えると一つ気づくことがあります。
それは、一番太陽が近く、真上にある時間帯に、真上からだけではなく、角度をつけて浴びることになるということです。

快晴の日も特に地面からの反射光等で、真上からの紫外線以外にも注意しなくてはいけないのは同様なのですが、
夕日のように斜めから紫外線が届くことになりますし、特にビルなどの反射を考えると曇りの日は横からの入射光が増えそうです。

少しわかりにくい絵ですかね・・・?
太陽が真上にあって日差しが強力な時間であっても横から入って来る紫外線が多いよ、ということです。

こうなると日傘や帽子では防げない成分も多いでしょう。
もちろん反射まで考えると立地等に依存した部分は大きいですが、予想だにしない方向から紫外線を浴びてしまうところに曇りの日特有の怖さがあると言えます。

 

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おわり:曇り特有の日焼けしやすさ有り。日焼け止めで対策を。

というわけで、世の中では「曇りの日は紫外線量アップ」という少し勘違いが含まれた認識になっていたりもしますが、
実際に散乱光が組み合わさることで日焼け対策は少し難しくなるのは事実だと思います。
曇りの日は太陽の場所以外の方向に対する日焼け対策が重要ということで、ますます日焼け止めの重要性が高いと言えそうですね。

テニス部のおばさんの行動はとても正しかった・・・!!

皆さんもこれからの季節、曇りの日こそベチョ〜っと日焼け止めを塗っていきましょう。

 

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