反応機構とは?有機化学の巻き矢印の書き方を解説!

反応機構と巻き矢印
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どうも、大学院で有機化学を7年くらい研究しているともよしです。

第1回大学有機化学入門講座。今日は、

  • 大学に入って有機化学の反応機構の巻矢印が分からなくなっている大学生
  • 自分の専門外も勉強してみたい、有機化学を勉強したいという大学院生や卒業生

に向けて、大学で勉強する有機化学の基礎の部分、有機化学反応の反応機構(巻矢印)を、やさしく解説していこうと思います。

 

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反応機構とは?:有機化学の反応は「巻き矢印」であらわす

反応機構の巻矢印とは

有機化学反応は、目には見えないものの、多くの反応について、分子中のどの原子がどこと反応してどう結合ができて…というところまで、詳細に理解されています。

有機化学者たちは、フラスコの中でどんな反応が起こっているのかを理解するために、上図の赤い矢印のような曲がった矢印(通称巻き矢印)をつかいます。

そして巻き矢印を使って電子の流れを表す、上図のようなものを反応機構といいます。

今日はその、巻き矢印をつかった反応機構の書き方について、初学者向けにやさしく解説していこうと思います。

 

巻き矢印の基本(結合の形成と切断)

結合ができるとき(結合の形成)の矢印

下図のように、アニオン(負電荷を持っているもの)Aとカチオン(正電荷を持っているもの)Bが反応して、ABが生成する反応があるとします。この反応の反応機構は、下図のように表します。

巻矢印による結合形成

電子を与えるAから矢印が始まり、電子を受け取るBに矢印がささります。その結果、AとBの間に結合ができます。

ここで、電子を多く持っているAが、電子不足なBにアタックしている様子から、このような反応を、「アニオンAがカチオンBに“求核攻撃する”」と言うことがあるので、“求核攻撃”という言葉を覚えておいてください。

ともよし
このとき、Aは電子を与えているので、形式電荷-1が“+1”され、形式電荷はゼロとなります
また、Bは電子を受け取っているので、形式電荷+1が“-1”され、形式電荷はゼロとなります。

 

同様に、Aがアニオン/中性(電荷ゼロ)の場合、Bがカチオン/中性(電荷ゼロ)の場合、それぞれの組み合わせで、以下の4通りができあがります。

ともよし
電子を渡すと+1、電子を受け取ると-1、ということを意識しながら確認してください。
巻矢印による結合形成

↓色分けするとこんな感じですね。ついてこれてますかね。

巻矢印、反応機構、形式電荷の変化
ポイント:電子を渡すと形式電荷が+1され、電子を受け取ると形式電荷が-1される
ポイント:電子は「電子が多い所から、「電子が少ない所」へ流れる

 

例:水のプロトン化

プロトン化の巻矢印
ともよし
電子を多く持っている酸素原子(電子が多い所)から、プロトン(H+)(電子が少ない所)に電子が流れる。という自然なことです。磁石がひきつけあうみたいなイメージですね。

 

結合が切れるとき(結合の切断)の矢印

反対に、A-B結合が切れる矢印は、下図のように表します。結合が切れるときは、切れる結合から矢印が始まり、電子を受け取る原子に矢印がささります。

結合切断の巻矢印

基本的には、電子を欲しがっている原子(カチオン等 or 電気陰性度の大きい原子)の方に電子が流れます(上図上式ではカチオンに電子が流れている。上図下式は、Aの方がBより電気陰性度が高い場合の矢印)。

ポイント:電子は、電子を欲しがっている原子へ流れる

 

例:オキソニウムイオンの脱プロトン化

脱プロトン化の巻矢印
ともよし
水のプロトン化の逆ですね。カチオンである酸素に電子が流れています。

 

最後に

まとめ:結合の形成/切断の巻き矢印

そろそろ初学者さんは疲れてきたころだと思うので今日はここまでにしましょう。少し振り返ります。

AとBの間に結合ができる矢印は、電子を与えるAから矢印が始まり、電子を受け取るBに矢印がささります(下図)。

巻矢印による結合形成

反対に、結合が切れるときは、切れる結合から矢印が始まり、電子を受け取る原子に矢印がささります(下図)。

結合切断の巻矢印

理解できましたでしょうか? わからないことがあれば、遠慮なくコメントに書いてください(^^)

 

次の記事(予定):カルボニルへの付加反応

ケトンの付加の巻矢印

次の記事では、ケトンへの付加反応をやりましょう(予定)。

これ以前は、矢印が1本の単純な反応でしたが、ここからは矢印が2本出てきます。お楽しみに。

 

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