有機合成化学を学んだ人の就職先例

有機合成化学の就職
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こんにちは。大学院生ブロガーのともよし(@tomo141)です!

今日は、有機化学を勉強した人がどんな就職するか?という話をしてみます。

具体的には、“専門が有機化学”という人の就職の一例として、“製薬企業での研究職”というものがあるので、これがどんなお仕事なのか?というのを説明していきたいと思います。

 

この記事は、こんな人におすすめ

  • 専門外の分野も勉強したい大学院生
  • 有機化学を専門にしたいけど、どんな就職があるんだろう?と思っている大学生
  • 有機化学が好きになってきた高校生

(中学理科で化学を少し勉強しただけ、という文系出身の方でも分かるように書きます!)

 

有機系研究室に興味があるor所属している学生には、こちらの記事もおすすめです。
関連記事(ともよしブログ):有機系研究室の学生が最低限知っておくべきこと、D3のぼくから伝えておきたいこと – ともよしブログ|理系を楽しむ

 

就職の話の前に…「有機化学とは?」

有機化学を学んだ人の就職、ということで、まずは就職の話の前に、「有機化学とは?」というお話をしておきます。

 

そもそも有機化学とは、炭素がつながっている分子(有機化合物)を扱う化学のことです。

身の回りの多くのものは、有機化合物です。

 

例えば、エタノール。

お酒に入っているアルコール(=エタノール)も有機化合物です。

エタノールは炭素が2つ繋がった構造を持っているのです。

 

エタノールに限らず、砂糖も、布団も、りんごも、プラスチックも、有機化合物です。

このように、私たちは、いくつかの炭素がつながっている分子(有機化合物)に囲まれて生活しています。

 

就職の話の前に…「薬はたいてい、有機化学で造られている」

そして、薬も例に漏れず、そのほとんどが有機化合物です。

しかも、現在売っている薬の大部分が、有機化学の技術(有機合成)を使って合成されているのです。

「薬は、植物から抽出してきてそれを飲んでいる」と思う方も少なくないかもしれません。

しかし、実際は、実験室でフラスコを使って試薬を混ぜているような、実験で作られた化合物を飲んでいるのです(もちろん、とても厳しい安全基準を満たすものしか販売することはできません)。

 

有機化学系の就職:薬の多くは、人間の手で新しく生み出された有機化合物

薬を世界中の人々に届けるために、薬は工場で大量に造られています。その規模は100kgとか1000kgとかいう大スケール。

もちろん、薬を工場で大量合成する仕事もありますが、今日お話したいのは、“工場での合成”よりももう少し前の段階。“新しい薬の開発”のお仕事の部分です。

 

「新しい薬の開発?」と思うかもしれません。

 

薬の有効成分は、自然界に大量にあるわけじゃないから、工場で大量合成するんでしょ?

 

と、最初はぼくも考えていました。でも違うんです。

人間が有機化学の力を使って、自然界には存在しなかった有機化合物を生み出すことで、新しい薬を作っているのです。

 

メディシナルケミスト:製薬企業に就職したら、有機化学で創薬研究をする

“有機化学の力を使って、自然界には存在しなかった有機化合物を生み出す”。このお仕事をしているのがメディシナルケミストという人たちです。

創薬研究の初期段階では、メディシナルケミストはまだ主役ではありません。

創薬研究の初期段階では、計算化学やスクリーニングによって、「こんな分子なら病気に効くんじゃないのー?」という分子、リード化合物というものが導き出されます。

ここからはメディシナルケミストが主役です。

このリード化合物を元に、メディシナルケミストは構造の最適化(もっと効く化合物、もっと安全な化合物はどんな分子か?というのを決める研究)をおこないます。

メディシナルケミストには、様々な構造を有する化合物を、短期間で、多くの数、効率よく合成できる力が必要です。

これを実現するためには、「作りたい分子は何でも作れますよ」と言えるくらいの有機化学力に加え、失敗の少ない反応をたくさん知っている必要がありますし、どのような構造なら病気に効きやすいか?危険性が少ないか?という知識や勘が大切になってきます

この辺りは、大学院での研究をどれだけしっかりやっているか、という所で差がついてきます。

 

就職後。有機化学の力で生み出された薬の卵を孵化させられる人は多くない

メディシナルケミストが合成した分子も、そのほとんどは世に出回ることはありません。

有機化学の力で合成した分子は、動物試験、臨床試験(ヒトが飲む)などを経て、発売されるわけですが、その成功確率は何万分の1です。

1つの薬が開発されるまでに、何万もの分子が、動物試験などで失格になっていくのです。

ひとりのメディシナルケミストに着目しても、自分が有機化学の力で合成した“薬の卵”を孵化させられる人は多くないのです。

生身の人が飲むことになる薬は、相当厳しい基準値を満たさないと市場に出ることはありません。

だからそれだけ、新しい薬を開発することは難しいのです。

 

メディシナルケミストが何千種類も化合物を作っても、すべてがボツになる可能性大いにあります。

「それは運ゲー(運だけで決まるゲーム)だ」と思うかもしれません。

しかし、メディシナルケミストは、その成功確率を0.001%でも上げようと、来る日も来る日も考え、合成し、また考えています。

 

それは、自分が合成した分子で、たくさんの命を救いたい。そういう素晴らしい気持ちがあるからでしょうか。

 

100人のメディシナルケミストに、100通りの思いがあると思います。

 

ぼくは、ヒトという超複雑で超敏感な容器の中で、自分の分子がイタズラすることなく、必要なところだけで必要な最高のパフォーマンス(病気を治す)をする。そんな分子が作れることが、研究者としての最高の成果であり、それを目指すのことが研究者目指すべき一つの姿なのではないかと思っています。

 

関連記事:研究職で内定がほしい理系大学院生がやるべき9つのこと

 

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