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薬学代表として、薬の入門的な話をします!
この記事を読んでいただいている方のほぼ全員が、これまでに一度は薬を飲んだことがあるはずです。
その飲んだ薬がどのように体の中で動いて、そして消えていくかを簡単に解説します!
(図の作成が大変だったため、現時点では簡易版です。時間ができたときにリライトします!)
(CMです)
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薬の服用から体内消失まで
薬の体の中での動きは、4工程に分類されます。
吸収:A, absorption
分布:D, distribution
代謝:M, metabolism
排泄:E, excretion
これに加えて、時々
毒性:T, toxicity
が加わることがあります。
薬学ではこれをつなげて、ADME(アドメ)またはADMET(アドメット)と呼びます
ここではtoxicityを除いたADMEについて解説していきます!
ADME
ADMEの全体像は…
飲む
↓
胃
↓
腸
↓(A)
血液
↓
脂肪や臓器に分布(D)
↓
肝臓で分解 (M) or腎臓から尿に流れ出る (E)
という感じになります。では、順次解説していきます。
吸収(absorption)
吸収ですが、実はこの定義が一般の人には理解しにくい部分になります。
吸収の定義は…
薬物が血液に入った段階
です。
どういうことかというと、胃や腸は、内視鏡で観察できます。
つまり、外から触ることができる部分となります。
そのため、消化管は体の外としてとらえるのです。
私たちは食事をしますが、食事中の栄養分は、胃や腸の壁をすり抜けて血管へと入っていきます。
薬もこれと同じように、胃や腸の壁をすり抜けて、壁の向こう側の血管へと入っていきます。
こうして血管に入って、初めて薬が吸収されたといいます。
薬学ビギナーの方はこの”吸収”の定義をしっかりと脳裏に刻んでおきましょう!!
分布(distribution)
分布とは、吸収(血管に入った)された薬が体のどの部分に移動していくかということです。
この分布は、薬物成分の科学的性質に大きく左右されます。
例えば…脂溶性の高い薬剤は、脂肪が集まった脂肪組織へ集まります。つまり皮下脂肪ですね。
一方、水溶性の高い薬剤は、血管にとどまる傾向があります。
また、塩基性の薬物は母乳(弱酸性)へと集積することもあります。
このように、医薬品の性質に応じて体の各所へと広がることを分布といいます。
後述しますが、薬物が体から消えていくメインルートは肝臓(肝代謝)や腎臓(尿排泄)となっています。
肝臓や腎臓へたどり着き、体内から処理されるには、薬物が血液に溶けてそれぞれの臓器へと運ばれる必要があります。
そのため、脂溶性が高いものは脂肪細胞にとどまってしまい、体からの消失が非常に遅くなってしまいます。
代謝(metabolism)
医薬品か体から消える工程には、代謝と排泄があります。
まずは代謝です。代謝は主に肝臓で行われます。
いきなりですが、「人間は体から油をだしますか?」
基本的に、人間の体内に一度吸収されたモノが排出されるルートは、尿、汗など”水”ですよね。
(便での排泄ルートがありますが、複雑になるのでここでは省略します。)
ですが、医薬品の多くは消化管で吸収されやすくするために、”脂溶性”の性質をもっています。
つまり、「医薬品は脂溶性であることが多いのですが、体外に排出するためには、水に溶かさなければならない。」
というジレンマが生じます。
しかし、人間の体はよくできており、脂溶性の高い化合物を、水溶性化合物へと変換する能力を持っています。それが代謝です。
そのパターンは2つ。1次代謝と2次代謝です。
1次代謝(官能基の付与)と2次代謝(抱合)です。
いずれも肝臓でメインに行われる変換です。
1次代謝は、主にCYP450が行います。CYP450は肝臓に大量に存在しています。
酸素を使って、OH基の導入などを行います。
2次代謝は、1次代謝で導入したOH基や、薬剤がもともと持っている官能基に
アミノ酸や糖などの高極性置換基を結合させます。
これらの代謝で水溶性が増した化合物は、水溶性化合物となり血液に溶け、腎臓や汗腺に運ばれて、尿や汗として排出されます。
排泄(excretion)
医薬品か体から消える工程には、代謝と排泄があります。
続いて、排泄です。
代謝は、医薬品分子の構造が変化し、別の化合物へと変換されていますが、
排泄とは、代謝(変換)されることなく、そのまま体外へと排出されることを言います。(排泄は主に尿で行われます。)
そのため、排泄で体内から消える薬物は、始めから水溶性が高い化合物であることが特徴です。
始めから水溶性が高い化合物である理由ですが…これには、尿の作られ方を知る必要があります。
食べ物は、
食べ物→口→胃→小腸(栄養分はここで吸収される)→大腸→肛門→便
として出ていきます。このルートは外から触ることができます。
では、どのようにして尿は作られているのでしょうか?
飲み物→口、胃、腸→血液→腎臓→膀胱→尿
というルートで作られます。つまり排泄のルートは、「血液→腎臓→膀胱→尿」となります。
そのため、排泄されるには医薬品が、脂肪組織などではなく、血液中にとどまっている必要があります。
このことから、血液中にとどまりやすい水溶性医薬品は、腎臓を経て、尿から排泄されていきます。
また、水溶性の医薬品は体内での持続時間が短い傾向にあります。
(CMです)
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最後に
非常に簡単にですが、体内での医薬品の動きを簡単に解説してみました。
より深い記事については、追加で書いていこうかなと思います。
読んできただき、ありがとうございました。
代謝された化合物が排出されるのは、排泄とは言わないんですか?
排泄である前に、代謝に分類されます!