飲んだ医薬品が体内から消失するまで

飲んだ医薬品が体内から消失するまで
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副代表。有機化学と生物学、いわゆるケミカルバイオロジー研究者です。理系が輝く場所を作ります!6年薬卒で、薬局薬剤師としての労働経験があり、化学系薬剤師としても活動してます。

薬学代表として、薬の入門的な話をします!

この記事を読んでいただいている方のほぼ全員が、これまでに一度は薬を飲んだことがあるはずです。

その飲んだ薬がどのように体の中で動いて、そして消えていくかを簡単に解説します!

(図の作成が大変だったため、現時点では簡易版です。時間ができたときにリライトします!)

 

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薬の服用から体内消失まで

薬の体の中での動きは、4工程に分類されます。

吸収:A, absorption

分布:D, distribution

代謝:M, metabolism

排泄:E, excretion

これに加えて、時々

毒性:T, toxicity

が加わることがあります。

薬学ではこれをつなげて、ADME(アドメ)またはADMET(アドメット)と呼びます

ここではtoxicityを除いたADMEについて解説していきます!

 

ADME

ADMEの全体像は…

飲む




↓(A)
血液

脂肪や臓器に分布(D)

肝臓で分解 (M) or腎臓から尿に流れ出る (E)

という感じになります。では、順次解説していきます。

 

吸収(absorption)

吸収ですが、実はこの定義が一般の人には理解しにくい部分になります。

吸収の定義は…

薬物が血液に入った段階

です。

どういうことかというと、胃や腸は、内視鏡で観察できます。

つまり、外から触ることができる部分となります。

そのため、消化管は体の外としてとらえるのです。

口、胃、腸(小腸、大腸)は外から触ることができる

私たちは食事をしますが、食事中の栄養分は、胃や腸の壁をすり抜けて血管へと入っていきます。

薬もこれと同じように、胃や腸の壁をすり抜けて、壁の向こう側の血管へと入っていきます。

こうして血管に入って、初めて薬が吸収されたといいます。

吸収

栄養素や医薬品は主に小腸から吸収されます

薬学ビギナーの方はこの”吸収”の定義をしっかりと脳裏に刻んでおきましょう!!

 

分布(distribution)

分布とは、吸収(血管に入った)された薬が体のどの部分に移動していくかということです。

この分布は、薬物成分の科学的性質に大きく左右されます。

例えば…脂溶性の高い薬剤は、脂肪が集まった脂肪組織へ集まります。つまり皮下脂肪ですね。

一方、水溶性の高い薬剤は、血管にとどまる傾向があります。

また、塩基性の薬物は母乳(弱酸性)へと集積することもあります。

このように、医薬品の性質に応じて体の各所へと広がることを分布といいます。

後述しますが、薬物が体から消えていくメインルートは肝臓(肝代謝)腎臓(尿排泄)となっています。

肝臓や腎臓へたどり着き、体内から処理されるには、薬物が血液に溶けてそれぞれの臓器へと運ばれる必要があります。

そのため、脂溶性が高いものは脂肪細胞にとどまってしまい、体からの消失が非常に遅くなってしまいます。

 

代謝(metabolism)

医薬品か体から消える工程には、代謝と排泄があります。

まずは代謝です。代謝は主に肝臓で行われます。

 

いきなりですが、「人間は体から油をだしますか?

基本的に、人間の体内に一度吸収されたモノが排出されるルートは、尿、汗など””ですよね。

(便での排泄ルートがありますが、複雑になるのでここでは省略します。)

ですが、医薬品の多くは消化管で吸収されやすくするために、”脂溶性”の性質をもっています。

つまり、「医薬品は脂溶性であることが多いのですが、体外に排出するためには、水に溶かさなければならない。」

というジレンマが生じます。

しかし、人間の体はよくできており、脂溶性の高い化合物を、水溶性化合物へと変換する能力を持っています。それが代謝です。

 

そのパターンは2つ。1次代謝2次代謝です。

1次代謝(官能基の付与)と2次代謝(抱合)です。

いずれも肝臓でメインに行われる変換です。

 

1次代謝は、主にCYP450が行います。CYP450は肝臓に大量に存在しています。

酸素を使って、OH基の導入などを行います。

 

2次代謝は、1次代謝で導入したOH基や、薬剤がもともと持っている官能基に

アミノ酸などの高極性置換基を結合させます。

 

これらの代謝で水溶性が増した化合物は、水溶性化合物となり血液に溶け、腎臓や汗腺に運ばれて、尿や汗として排出されます。

 

排泄(excretion)

医薬品か体から消える工程には、代謝と排泄があります。

続いて、排泄です。

代謝は、医薬品分子の構造が変化し、別の化合物へと変換されていますが、

排泄とは、代謝(変換)されることなく、そのまま体外へと排出されることを言います。(排泄は主に尿で行われます。)

そのため、排泄で体内から消える薬物は、始めから水溶性が高い化合物であることが特徴です。

 

始めから水溶性が高い化合物である理由ですが…これには、尿の作られ方を知る必要があります。

食べ物は、

食べ物→口→胃→小腸(栄養分はここで吸収される)→大腸→肛門→便

として出ていきます。このルートは外から触ることができます。

 

では、どのようにして尿は作られているのでしょうか?

飲み物→口、胃、腸→血液→腎臓→膀胱→尿

というルートで作られます。つまり排泄のルートは、「血液→腎臓→膀胱→尿」となります。

そのため、排泄されるには医薬品が、脂肪組織などではなく、血液中にとどまっている必要があります。

腎臓、膀胱、尿道

このことから、血液中にとどまりやすい水溶性医薬品は、腎臓を経て、尿から排泄されていきます。

また、水溶性の医薬品は体内での持続時間が短い傾向にあります。

 

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最後に

非常に簡単にですが、体内での医薬品の動きを簡単に解説してみました。

より深い記事については、追加で書いていこうかなと思います。

読んできただき、ありがとうございました。

 

 

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