バイオテクノロジーって何?【暮らしの身近なところに生物の力】

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AI

九州在住 / 某公立大学大学院生。管理栄養士養成過程を経て免許取得。今は乳酸菌の物質生産を研究中。読書、コーヒーと海外旅行が好き。食と健康オタクです。

こんにちは、食品微生物学系大学院生のAI(@kwhr_ai)です。

突然ですが、「バイオテクノロジー」

と聞くと、何を思い浮かべますか?

・研究者が細かい作業する?

・手袋付けて試験管を振る?

・微生物をつかって何か作る?

という、どこか難しいイメージがあるかもしれません。

でも実は、バイオテクノロジーはあなたの身近にも存在する技術のことなのです。

そこで今回は、バイオテクノロジーについてと、生活の中で見られるその技術について解説していきます。

 

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バイオテクノロジーとは

まず初めに、バイオテクノロジーとは生物のもつ機能や能力を人間の生活に役立つように研究する学問のことを指します。

 

バイオテクノロジーの言葉の由来

バイオ(生物学)とテクノロジー(技術)を合わせた言葉である、バイオテクノロジー。日本語では生物工学とも言い、その技術は古くから今に至るまで長きにわたり利用されています。その中でも古くから使われてきた技術をオールドバイオ、遺伝子工学などに代表される最新の技術をニューバイオと言います。

 

オールドバイオ(発酵食品など)

オールドバイオは、いわゆる発酵食品などの製造技術を指します。

日本では古くから発酵食品を作り、食してきました。例えば、一年を通して野菜を摂取するための漬物や、たんぱく質の供給源としての納豆や豆腐、料理の風味・味付けに欠かせない醤油や味噌などの調味料全てがオールドバイオと言えます。しかし、遠い昔の時代にもちろん生物学に関する知識や研究技術があるわけもなく、当時のヒトの経験に基づいた技術で製造されていました。

その中で、オールドバイオである発酵食品中の微生物の働きや機能がベースとなり、加えて科学技術の発展に伴いニューバイオが発展してきました。

 

ニューバイオ(遺伝子工学など)

オールドバイオと対照的で、ニューバイオでは微生物の機能を明らかにしその機能を応用することがメインとなります。後ほど、例を7つ挙げますが、どれも私たちの暮らしと密接に関係しているものばかりです。このニューバイオの発展によって我々の暮らしはどんどん豊かになっています。

 

バイオ(生物学)の生物って何?

バイオテクノロジーは、生物工学。生物工学は、何かしらの生き物を扱うことが分かったと思います。

一般的に、バイオテクノロジーの世界では

①研究対象のモデル生物の機能を利用した新たな技術を生み出す研究

②未だ発見されていない未知の生物を見出す研究

が積極的に行われています。

 

モデル生物

バイオテクノロジーで扱う生物は、その生命活動や生体内で起きている現象が分かりやすく、扱いやすい(飼育しやすい)生物を「モデル生物」として選び、研究を進めていきます。

代表的なもの↓

・微生物(大腸菌や酵母など)

・昆虫(ショウジョウバエ)

・動物(マウスやラット)

・植物(シロイヌナズナ)

特に、最もよく利用され、そして私たちの生活に一番身近に存在しているのが微生物です。あなたの皮膚、髪の毛、口の中、お腹の中から空気中、机の上、料理の中などあらゆるところに微生物は存在しています。そのなかでも大腸菌(Escherichia coli)は最も利用されているモデル生物で、遺伝子工学の代表生物とも言えます。

微生物学についての学問の基本については、みるおかさんのこちらの記事にまとめてあるのでぜひご一読ください:微生物学では何を学ぶのか?学問のキホンから研究室選びで注意すべきことまで

 

未だ見つかっていない生き物の存在

これまでに多くの生物が発見され、研究対象(モデル生物)として扱われてきました。

しかし、未だ発見されていない生き物が地球上には約1億種以上存在するとも言われています。そのため、新種の生き物から未だ知られていない機能や特徴を見出すことも精力的に研究されており、それもバイオテクノロジーの魅力のひとつとも言えます。

 

身近に存在するバイオテクノロジー

さて、私たちの暮らしは生物を使って豊かになったと言っても過言ではありません。そこで、実際に生活の中にある代表的なバイオテクノロジー技術(オールドバイオ2種/ニューバイオ5種)を紹介していきます。

 

オールドバイオの代表2種

 

①発酵食品

モデル生物:微生物(乳酸菌、酵母など)

オールドバイオの代表である発酵食品。特に日本は地方ごとに風土に合わせた発酵食品が数多く存在する世界有数の発酵大国です。例えば醤油、味噌、納豆、食酢、清酒などの代表的なものに始まり、なれ鮨、鮒鮨、すぐき、かんずり、奈良漬など地域に根差した食品が挙げられます。

 

②パン製造

モデル生物:微生物(酵母)

朝食の食パンや、ランチのバケットなど、普段よく口にするあのふわふわしたパンも、バイオテクノロジーのひとつです。パン作りに欠かせない生き物は酵母であり、酵母がパンの材料中に存在する糖類を食べて呼吸をすることによって、あのふわふわとしたパンの食感を作り出しています。この酵母が呼吸(CO2を排出)する機能を用いたのが、パン製造なのです。

 

ニューバイオの代表例5種

 

①病気の治療(創薬)

モデル生物:微生物

バイオテクノロジーを用いた薬の先駆けかつ代表は、「インスリン」です。従来は、ブタの膵臓から抽出したブタインスリンを治療に用いてきましたが、アミノ酸配列が一箇所違うので副作用が問題視されてきました。現在は大腸菌を用いたインスリンが使われるようになっています。

他にも、iPS細胞や高血圧治療薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害薬などもバイオテクノロジー技術の代表です。

 

②抗生物質

モデル生物:微生物(カビ類)

風邪を引いた時に病院で風邪薬としてもらうことの多い抗生物質は、有害細菌やウイルスの生育を阻害する働きをもちます。この抗生物質はカビが生産しており、代表的な抗生物質であるペニシリンは青カビが作っています。

しかしながら抗生物質は有害菌だけでなく有用菌の生育まで阻害してしまうことから、風邪を引いた時に処方されることが少なくなってきました。この抗生物質に変わるものとして抗菌物質(抗菌ペプチド)が近年盛んに研究されてきています。

参考:乳酸菌が抗菌物質を作り出す???乳酸菌の秘めたる力

 

③洗剤に含まれる酵素

モデル生物:細菌

酵素(Enzyme)とは、平たく言うならば「大きなものを分解して小さくするもの」の総称です。代表的なものにアミラーゼ(糖質)やプロテアーゼ(たんぱく質)、リパーゼ(脂質)があり、これらは人間の体の中にも存在します。

また、洗濯物の汚れの原因はたんぱく質(襟あか、食品由来)や脂質(皮脂、口紅)、でんぷん(ご飯、パスタソース)に分けられ、これらの汚れを落ちやすくするために酵素が用いられます。酵素もバイオテクノロジーの力を借りて生産され、今日の”汚れがよく落ちる洗剤”が誕生しています。

 

④遺伝子組換え食品

モデル生物:植物

腐らないりんご、害虫の近寄らないとうもろこし、少ない水でよく育つ花など、植物の遺伝子を操作することで優良な作物を作り出すことを遺伝子組換え技術といいます。

日本では納豆や豆腐などに「遺伝子組換えではない」と明記されていることも多いですね。このことからも、遺伝子組換え食品(ないしは作物)は、体に有害なイメージが根強いということ、安全性の担保が不十分といった問題点があります。

 

⑤生分解性プラスチック

モデル生物:細菌

プラスチックは加工しやすさゆえに多くの製品に用いられていますが、その難分解性(分解されにくい)かつ体内への蓄積性の高さから、海洋汚染や自然環境破壊、我々が口にする魚体への蓄積等が問題となっています。

参考:【不要なゴミを減らす暮らし方】ゼロウエストを遂行するための5R

そこで近年、プラスチック同様に使え、使用後は水と二酸化炭素に分解可能である「生分解プラスチック」に関する研究が盛んになってきました。この生分解性プラスチックの代表的な製造法に、微生物が菌体内に合成・蓄積させる方法があり、環境問題に変革をもたらすバイオテクノロジーと言えます。

 

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最後に

今回バイオテクノロジーの例として挙げた7つの技術はほんの一部であり、実は世界にはさまざまなバイオテクノロジー技術によってもたらされた快適な暮らしが存在しています。

そしてこれからも多くの技術革新によって、私たちの暮らしを豊かにするだけでなく、環境に配慮した新たな技術が生まれることを願っています。

 

参考文献

ひらく、ひらく「バイオの世界」14歳からの生物工学入門 公益社団法人 日本生物工学会 2012年発行

レクチャーバイオテクノロジー 橋本直樹著 培風館 2007 

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