ゆうき
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みなさん、こんにちは! ゆうきです。
今回は、現在になって、再び注目を集めている超音速旅客機について書いていこうと思います。
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超音速旅客機とは
超音速旅客機(Supersonic transport)はその名の通り、超音速(高度12km~18kmで約1065km/h以上)で飛行する旅客機のことです。
超音速旅客機と言えば、多くの人がコンコルドを思い浮かべるのではないでしょうか。
ご存知の方も多いと思いますが、コンコルドは1970年中頃から2000年初頭まで運航していたイギリスの企業とフランスの企業が共同開発した超音速旅客機です。高度16~18kmを音速の2倍で飛行していました。
コンコルド
なぜ、コンコルドはその役目を終えることになったのでしょうか。
また、なぜ今、超音速旅客機が再び注目されることになったのでしょうか。
超音速旅客機のメリット
超音速旅客機は現在運航している旅客機のおよそ2倍で飛行することが出来ます。
つまり、飛行時間を半分に減らすことが出来ます。
グローバル化が進んでいる現在海外主張なども頻繁にあると思いますがその際、移動の負担を軽減できます。場合によっては、日帰り出張も可能になるでしょう。また、旅客機がすべて超音速旅客機に変われば、機体数を半分程度に減らすことが出来るので、経費削減も期待できます。
従来型超音速旅客機のデメリット・課題
燃費が悪い
超音速旅客機は通常の旅客機と比較して大きな推力を必要とするため低バイパス比エンジンを使用する必要がありました。
バイパス比とは、燃焼室を通らない空気と燃焼室を通る空気の比です。つまりバイパス比が低いほど燃焼に多くのエネルギーを必要とするため、燃費が悪くなります。
低バイパス比ターボファンエンジン
また、速度が音速付近になると造波抵抗と呼ばれる抵抗が発生します。造波抵抗は衝撃波を発生させる際に期待に加わる抵抗で、推進力を低下させます。そのため、より大きな推力が必要となり燃費が悪くなります。
ソニックブームによる騒音問題
超音速旅客機が音速を超える際、機体から発生する衝撃波が統合され、それが地上に到達することによってソニックブームと呼ばれる爆音が発生します。
ソニックブームはうるさいだけでなく、その振動で窓ガラスが割れたり、爆音によるストレスで家畜に精神的な被害を与えるといった環境問題を引き起こすため、問題視されてきました。
このような課題を克服することが出来なかったため、コンコルドは退役を余儀なくされました。
しかし、技術が進歩した現在では、これらの課題を解決しうる様々な技術が考案されています。以下でそれらの技術について書いていきます。
最新の技術による課題の改善
燃費の改善技術
燃費改善のためには、より小さな推力で推進する必要があるため、機体に加わる抗力を低減することが有効な手段となります。
機体先端形状の鋭利化
抗力を低減するための方法として機体先端形状を鋭くする方法が挙げられます。
抗力を小さくするには衝撃波を弱くする必要があります。機体先端が鈍頭である場合、離脱衝撃波が発生します。
一方で、機体先端を鋭くした場合、付着衝撃波が生じます。付着衝撃波背後の壁面の圧力は離脱衝撃波背後の壁面の圧力に比べて小さくなります。
したがって、機体先端形状を鋭くすれば、衝撃波の強さが低減するため、抵抗を減らすことが出来ます。
ただし、機体先端形状を鋭利にすると、機体先端の強度が低下してしまうという課題がありました。また、ソニックブーム低減という観点から見ると鈍頭物体に比べて不利になります。
付着衝撃波と離脱衝撃波
エネルギー注入法
造波抵抗を低減する手法として、エネルギー注入法があります。この手法では機体先端の前方に熱エネルギーを与えることにより密度を低下させます。そうすることによって、渦度により渦輪が発生、停留して機体先端の形状を鋭くした場合と同様の効果が得られます。
この手法では、機体先端の形状を鋭くする必要がない一方で、熱エネルギーを与える必要があるので、エネルギー収支を考慮する必要があります。今のところ衝撃波管と放電場を用いた実験や数値計算などが行われているのみで、実用化には至っていません。
ソニックブームの低減技術
クワイエットスパイク
クワイエットスパイクは、ガルフストリーム社が開発したもので、機体先端に伸縮可能なノズルをつけ、超音速飛行時にノズルを伸長させることによって、ソニックブームを低減します。このソニックブーム低減の原理は、細長物体の理論に基づいています。
そもそもソニックブームによる騒音は図に示すように、機体から発生する衝撃波が大気を伝播する過程で整理統合され、地上に到達することによって生じます。なので、機体を細長くすれば、衝撃波が整理統合されるのが遅れます。
つまり、地上に到達するまでに、衝撃波が整理統合されなければ、ソニックブームを低減できるということです。
ただ、クワイエットスパイクはノズルが伸縮するため、システムの複雑性の問題を抱えています。
複葉機
超音速複葉機は東北大学が提案した新しいコンセプトの旅客機です。複葉機の超音速飛行する際、上下の翼から発生する衝撃波が干渉することによって、衝撃波の発生を抑え、ソニックブームを低減します。
超音速複葉機については数値計算による解析などが行われていますが、未解明な点が多いのが現状です。そのため、実用化に向けてMISORAという実証実験機が作られています。今後、様々な実証実験による超音速複葉機の飛行特性の解明が期待されます。
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最後に
今回は、超音速旅客機の課題と開発に向けた技術的取り組みについて紹介しました。最近では、JALがブームテクノロジー社に開発資金の拠出を行うなど、超音速旅客機の商用飛行への機運が高まっていることが伺えます。
このまま順調にいけば、超音速旅客機に乗れる日もそう遠くないかもしれませんね。
それでは今回はこのへんで失礼します。
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