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こんにちは、わもんです。
突然ですが、みなさんはAEDというものは知っていますよね?
自動車の免許を持っている方は、学科教習の時に使い方の講習会がありましたよね。
学校やショッピングモールなどの大きな建物にはほぼ必ず設置してあるので、見たことある方が多いと思います。
しかし、「あそこがAEDの設置場所か。覚えておこう。」なんて思う人や、普段から意識的にAEDに関心を向けているという人は医療従事者でもない限り、まずいないと思います。
もしかしたら、存在すらも気づいたことがないという人もいますかね・・・?
「AEDなんか使う場面ないよ」と思っているから、AEDの存在や使用に対しての意識が低いのかもしれません。または、そういう場面に遭遇したことがないから、いざ自分がAEDを使っているというイメージが湧かないのかもしれません。
だからと言ってAEDに対する意識の低さについて、別に皆さんを責めるようなつもりは全くありません!
しかし、私は自分の生活圏にAEDがどこにあるのかをほぼ把握しています!
その理由を私の経験を交えてお話します。
私が17歳のとき、地元のターミナル駅のバス停のベンチに座っていた男性が、突然意識をなくして倒れこみました。私は近くにいたので、第一発見者の方に救急車を呼ぶように言われたので電話しました。
また、AEDを使った救助や心臓マッサージ、救急車の到着までの一部始終を見ていました。私は、AEDが必要になることが、いつ起こるかわからない”ということを思い知らされました。
このような体験を通して”AEDに対して無関心ではいけない”ということを感じた私ですが、今回はみなさんに「AEDに関心を持ってほしい」くらいの気持ちで私の専門分野である医工学の観点から、AEDについて紹介していきたいと思っています。
AEDって何をする機器なの?
AEDの正式名称は、”自動体外式除細動器(Automoated External Defibrillator)”といいます。
”除細動器”は簡単に言うと、「心臓が異常な動きをしている時に、大きな電流を流して、元の心臓の動きに戻す」ための機器です。
実は勘違いしている方が多い点なのですが、止まった心臓を再び動き出させるものではありません。
AEDを使った経験がある方はわかると思いますが、AEDは使用者に対して音声で何をすればよいのかを指示してくれるので、条件が合えば医療従事者でなくても使用が可能です。
ちなみにこの条件とは、「周囲に医師・看護師・救急救命士などの医療従事者がおらず、患者に意識が無い場合」と定められています。
AEDを使う人がすることは、意識を失って倒れている患者に音声に従って電極を張り付けることだけで、そのあとはAEDが
- 自動で患者の心電図を解析し、
- 電流を流す必要があるかどうかを判断。
- 患者に流す電流の充電を行い、
- 電流を流す
というのが主な流れです。
もちろん、AEDですべてが解決するわけではなく患者さんの体に電気が流れた後、AEDの音声で心臓マッサージ・人工呼吸を救急隊が来るまで行う必要があります。
AEDを理解するための医学的な知識
前までの説明で、AEDは何をするための機器なのか、だいたい分かっていただけたかと思います。もっとAEDというものを理解するためには、少し医学的な知識を学ぶ必要があります。
複雑な用語や働きについては省いてできるだけ簡単に説明しますので、ついてきてください。
心臓の動き
心臓は「全身に血液を送り出すポンプ」の役割を持っています。心臓の拍動は心房側から心室側に電気信号で伝えられます。左心室から血液が全身に送られます。
頻脈性不整脈
これは、文字通り脈が速くなるというものです。これの何が問題かというと、脈が通常よりも速くなると「全身に血液を送り出すポンプ」の役割を持つ心臓が、効率的に血液を全身に送り出せないという状態になってしまいます。これを血行状態が破綻すると言います。
<例>心室細動、心室頻拍、心房細動、心房頻拍
(補足)もう少し詳しいことが知りたい方は、不整脈について分かりやすい動画がyoutubeに投稿されています。
心室細動・心室頻拍
心室性の頻脈性不整脈のこと。心室筋が高頻度で興奮してしまうことにより発生します。心室内の一定の場所で興奮している場合は心室頻拍、興奮が分裂して不規則に震えている状態を心室細動と呼びます。心室細動はただ心臓が震えているだけで、血液を送り出せない状態にある非常に危険な状態で、AEDなどの電気的除細動を使います。
下の図で上の波形は正常な心臓の興奮の心電図、下の波形は心室細動を起こしている心電図です。
(介護看護リハビリのフリー素材様 https://carenote.jp/sozai/ を引用させていただいております。ありがとうございます。)
無脈性電気活動
心臓の興奮は正常に機能しているけど、左心室がうまく動かず全身に血液を送り出せない状態のことです。
心房細動・心房頻拍
心房性の頻脈性不整脈のこと。心房筋が高頻度で興奮してしまうことにより発生します。心房内の一定の場所で興奮している場合は心房頻拍、興奮が分裂して不規則に震えている状態を心房細動と呼びます。
心房で起こる頻脈性不整脈に関しては、心室性の頻脈性不整脈に比べて危険性は小さいとされています。
心停止
頻脈性不整脈などのせいで血液が全身に送り出せず、血液が巡らなくなってしまっている状態のこと。
先ほどの述べた通りAEDは、心臓が正常な興奮をしなくなって血液を送り出すポンプの役割を果たさなくなっている状態において使われるものなので、心室性の頻脈性不整脈や、心停止状態において使用されます。
特に、心室細動が発生してから1分ごとに生存率が7%くらいずつ失われていくといわれているため、早急な電気的除細動が必要となります。
一方で、無脈性電気活動のような、心臓の興奮が正常に行われている場合においては使用することはできません。むしろ、正常な興奮をしている心臓に対する電気刺激は悪影響でしかありません。
AEDを理解するための工学的な知識
AEDに関係する医学的な知識について少し紹介しました。ここでは、AEDの目的である電気的除細動はどうすれば実現できるのかについて簡単にお話します。
電流を流すために構成する電気回路は、電気を充電する部分と患者に対して電気を放電する部分が必要となります。
上の回路図に記載した記号は、R:抵抗、L:コイル、C:コンデンサーです。
コンデンサーは、電源から掛かる電圧を充電する役割を持っています。
これを踏まえて、患者(上図のスマイルマークの人)に電流が流れるまでの流れを説明します。
- コンデンサーに電源から電圧を印加する。
- 十分なエネルギーがコンデンサーに蓄えられたら、スイッチを充電回路側から放電回路側に切り替える。
- 蓄えられたエネルギーをコイルを介して電極から患者に流す。
実際のAEDの内部回路はもっと複雑になっていますが、基本的な構成はこんな感じです。
(CMです)
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おわりに
今回は、私の専門分野”医工学”の技術の1つであるAEDについてご紹介しました。
AEDは、医学の知識はもちろんのこと、電気・電子回路の知識が無くては実現できない技術です。AEDだけでなく、たくさんの医療機器を成り立たせている学問は、医学・機械工学・電気電子・情報工学・生理学などたくさんあります。
医工学系の学科では、医療の進歩や医師を助けるための工学的な技術を開発するために多くの知識を学ぶことができます。広い学問を基礎とする分野であるからこそ、アイディアの幅はとても広いことが特徴です。
医工学を学ぶ人々は、医学と工学の知識を両方持った医師と技術者の橋渡しのような役割を担っていると私は思っています。理系高校生の皆さん、大学の学部の選択肢に医工学という分野はどうですか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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