物理工学科・機械工学科の大学では何を学ぶのか

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機械工学系の学部を卒業したtsuyoshiです。

 

理系の大学進学を目指す人で工学部を検討すると、”物理工学科”や”機械工学科”という名前の学科を必ず一度は目にすると思います。

しかし、大学のホームページに書かれているのは学ぶ学問の分野であることが多く、具体的にどのようなことを学ぶのか、高校生や他の学部の人にとっては分かりづらい場合も多いと思われます。

自分も高校生の時に大学のホームページの学科紹介を読みましたが、いまいち理解できなかった記憶があります。

そこで、今回の記事では、

「物理工学や機械工学ではどのようなことを学ぶのか」

について話をしていこうと思います。

 

機械をつくるためには幅広い知識が必要

物理工学科は工学のための物理を学ぶ、機械工学は機械を作るための工学を学ぶ、ということを目的に名付けられ、それぞれ設置されています。

つまり、物理工学科や機械工学科では、機械を作ること機械の研究開発ができる人材を輩出することを主な目的としているのです。

そのため、物理工学科や機械工学科で学ぶことは、そのための基礎知識になります。

そして、現代の機械はとても複雑であり、それを作るために機械に関する幅広い分野での知識が必要になってきます。

 

機械工学・物理工学で学ぶ学問分野

先ほど幅広い分野と言いましたが、機械工学・物理工学で学ぶ内容をより具体的に説明していこうと思います。

まず、工学のための物理の代表的なものである、熱力学・流体力学・材料力学・機械力学(解析力学)からなる「四力」が挙げられます。

また、それらを理解するために必要な数学を学びます。微分積分学・数理統計・フーリエ変換・ラプラス変換はその代表的なものです。

他にも、電磁気学・制御工学・振動工学・設計工学・計測工学・生産工学・量子力学・安全工学などの分野の内容を学びます。

 

このような幅広い分野の知識を、物理工学科・機械工学科では身に着けます。

ここで分野の名前を列挙しましたが、まだあまりイメージは湧いていないのではないでしょうか。

そこで、よりイメージを具体的に持てるように、それぞれの学問分野でどのようなことを学び、学ぶことで何ができるようになるのか、詳しく説明していきます!!

 

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機械系の学科における「四力」

機械系・物理工学系の学科では、力学に関する代表的な4つの分野のことを四力と呼びます。

まずはこれら「四力」がどのようなものなのか、説明していこうと思います。

 

①熱力学

熱(エネルギー)の動きについて扱う分野です。

機械において、熱やエネルギーは動力源となるものであり、その挙動についての知識は重要となります。

その代表的な例として、燃料を燃やして機械を動かすエンジンがあります。

熱やエネルギーをどのように運動に変換するのか、その時の効率はどうすればよくなるのか、ということを考えることで、熱を動力源とした機械の設計やその効率化などを行うことができます。

また、分子レベルの熱運動を統計的に扱ってマクロな運動を解析する、統計熱力学という分野を学ぶ場合もあります。

関連記事【Dr.STONE(ドクターストーン)】スターリングエンジンってなに?熱力学的に原理を解説!

 

②流体力学

流体の動きについて扱う学問です。

流体とは、気体や液体のような、流体を滑らせるように働く力のもとで連続的に変形しながら流動する物質のことです。

流体力学を学ぶことによって、航空機の周囲の空気の挙動の解析や、機械の中を移動している燃料などの液体の動きの解析を行うことができるようになります。

また、機械工学や物理工学とは少し外れますが、大気や海の動きを予測する天気予報や、生物の中を流れる血流の動きの解析も行うことができます。

関連記事:なぜ天気予報で1年後の天候を予測できないのか?数値計算シミュレーションの基礎と共に解説!

 

③材料力学

金属などの材料の特性を考慮を入れて、構造物全体にかかっている力の状態や安定性を求める分野です。

機械や建造物などの構造物を作る際には、壊れずに安定していることが求められます。

つまり、これらの構造物のそれぞれの部位にかかっている力に対し、それによって変形・破壊しないということが求められる、ということです。

一方で、その構造物の材料となる金属などは、伸びやすさ・硬さなどといった機械特性(材料特性)といったその材料に特有の性質をそれぞれ持っています。

構造物全体にかかっている力の状態と合わせることで、構造物の設計において適切な材料を選択し、また安全で安定な構造物の形状を考えることができるようになります。

 

④機械力学・解析力学

物体の運動の記述の仕方について扱う分野です。

通常、高校ではニュートンの運動方程式に基づいた物体(質点)の運動について学習します。

しかし、世の中の物体の運動の中には、ニュートンの運動方程式を適用することができない(あるいはできたとしても非常に困難な・複雑な)現象が存在します。

これには、質点の集合体を仮定した剛体の運動が例として挙げられます。

また、直線直交座標(≒xyz座標)ではなく、より適切な座標軸を選択することによって、物体の記述を簡便にすることができます。

その手法を学ぶのが、機械力学・解析力学と呼ばれる分野で、剛体の運動や、ラグランジュ方程式・ハミルトニアンの扱いなどを学びます。

この分野を基礎にして、他の分野での力学系の理解を進めていく、非常に重要な分野です。

 

機械系・物理工学系のための数学

①微分積分学

高校数学で学ぶ微分や積分を更に発展させた数学です。

この微分積分学は、多くの物理や数学において基礎的な知識になるため、学部の1年生で履修することが多くなります。

高校数学での微分や積分に加え、変数が複数ある関数(=多変数関数)における微分である偏微分や、多変数関数を積分する際に用いる線積分や面積分といった数学を学びます。

 

これらを学ぶことによって、流体の動きや電磁気の振る舞いなどの3次元的な物理現象や、熱のような複数の変数が存在する現象において方程式を導出することが可能になります。

さらに物理現象を記述する際に頻繁に用いられる、微分方程式の解き方も学びます。

 

②数理統計

現象やデータの「ばらつき」や「分布」を数学的に扱う分野です。

世の中の現象では、ばらつきやそれによる分布があることがほとんどです。

このばらつきや分布に違いや差があることを言うためには、数学的にばらつきや分布を扱う手法が必要であり、数理統計はそのために発展してきた分野です。

平均値や標準偏差などといった現象の概要を表す代表値や、正規分布やポアソン分布、二項分布などといった現象においてよく見られる分布の仕方について、それらの数学的な処理の仕方を扱います。

また、ばらつきがある中で、2つのグループ間で差があることを主張することは難しいのですが、数学的な仮定のもとでグループ間の差の有無を検討する、検定(仮設統計検定)も数理統計において重要な内容になります。

数理統計でデータの扱いを学ぶことは、研究によって世の中の現象を理解していくための、必須の基礎知識であると言えるでしょう。

 

③フーリエ級数・フーリエ変換

フーリエ級数・フーリエ変換は、理工学の様々な場面で起こる現象に対して解析するための視点を与える手法であり、またその解析法を指します。

フーリエ級数とは、関数を特定の三角関数の和で表す、というものです。全ての関数は、三角関数(sin・cos)の和で表すことができます。例えば、直線は逆位相の三角関数の和で表すことができたりします。

また、フーリエ級数が周期的な関数を展開するものなのに対し、フーリエ変換は非周期的な関数に対して変換を行うものです。

特に、電磁気や電気回路など、電気に関する専門知識を学ぶ際にフーリエ級数やフーリエ変換は役立ちます。また、情報学においても、信号処理などの場面での基礎となる分野です。

 

④ラプラス変換

ラプラス変換はフーリエ変換を少し修正することで、微分方程式を解くことのできるようにする手法です。

後に述べる制御工学において、入力と出力の関係性を表す関数である、伝達関数を求める際によく用いられる数学です。

工学において、スイッチの入/切など、ある時間を起点とした現象を解析することは非常に多く、そのような現象の解析にラプラス変換は役立てることができます。

 

工学のための基礎的な諸学問

①電磁気学

電場や磁場に関する現象について学ぶ学問です。

機械では電気や磁石が使われていることが多いです。そして、機械が小型化していくに従って、電機や磁石による電場や磁場の影響が大きくなり、考慮しなくてはならない項目となっています。

高校で学ぶクーロンの法則などの基礎的な内容から始まって、電磁気学において基礎方程式とされるマクスウェル方程式などを扱います。

電波輸送の研究など、電磁気が直接的に関係するような分野の研究では必須の知識であると言えます。

 

②制御工学

機械の制御の方法を学ぶ分野を指します。

機械を制御するためには「どのように機械が動くのか」という特性をモデル化して理解する必要があります。

そして、このモデルを元に、適切な力が機械に働くように制御する技術が必要になります。

このように、モデルを作成して適切に機械が働くようにするための技術について学ぶ分野が制御工学です。

この制御工学に加えて、周囲の状況を感知するセンサー技術や、モーターなどによっての力を生み出す技術、そして機械の仕組みを作ることのできる技術を組み合わせることで、機械を動かすことができるようになります。

 

③振動工学

機械を動かす際に必ず発生する、振動の扱いについて学ぶ分野です。

機械設計において、振動は避けることができないものです。

そして、振動が機械に悪影響を及ぼすことや、振動によって騒音被害が発生することなどといった、振動による影響は見過ごすことができないものがほとんどです。

また、振動によって機械が繰り返し変形し、その結果機械の材料の内部構造が変化して破損する、などといったことや、アメリカのタコマ海峡のつり橋落下事件のような、共振現象が原因となった重大な事故があります。

このような事態を起こさないためにも機械や構造物を設計するうえで振動について学ぶことは重要なこととなっています。

先ほど述べた以外の例だと、自動車の振動を緩和することで乗り心地をよくするといったようなことにも、振動工学の知識は活用できます。

 

④設計工学

機械設計における、基本的な手法や考え方を学ぶ分野です。

機械は、様々な部品から構成されています。この部品同士がどのように運動しあうのか、ということは設計の過程において非常に重要です。

このような機械の部品(部分)同士をどのような形状に、どのように設計すべきかを扱う分野は、特に機構学と呼ばれます。

また、設計した機械の仕様を他の人に伝える手段が必要です。それこそが製図であり、決められた手法で機械の寸法などのを記述します。

これにはCAD(Computer Aided Design)と呼ばれるコンピュータを用いた製図ツールが使われることが多く、実習・演習を交えた授業が行われることも少なくありません。

 

⑤計測工学

機械の状態などを様々なセンサによって測定するための手法を学ぶ分野です。

機械が設計の通りに動いているのか、製造したものが設計通りの大きさなのか、といったことを判断するためには、それを計測する技術が不可欠です。

また異常が起こったときにどこで異常が起こっているのかを確かめる・検出するときにもまた、機械の状態を計測する技術が不可欠です。

このように機械においてはその状態を確認するための数多くのセンサが存在し、それらの測定法を原理と共に学ぶ分野です。

 

⑥生産工学

工場などの生産現場において、どのように機械を作っていくべきかを学ぶ分野です。

機械などの工業製品は、設計し、試作品を作るだけでは完結しません。

機械の組み立ての順番や、どのくらいの量のものを作るかといった事柄を考えていく必要があります。また、多品種少量生産や少品種大量生産などの、生産・製造における戦略性も考える必要があります。

これらは現場で経験則で行われているものもありますが、一定は理論化されています。その理論を学ぶのが生産工学です。

有名な理論の例だと、トヨタ自動車のかんばん方式や、線形計画法が挙げられます。

 

⑦量子力学(量子物理学)

原子や電子などの物質のスケールにおいて成り立つ力学について学ぶ分野です。

私たちが普段生活している世界は、原子や、それを構成する電子・陽子・中性子、さらにはニュートリノやクォークなどによって構成されています。

これらの大きさのスケールにおいては、私達が普段生活している世界とは異なる物理法則が成り立ちます。

原子レベルの小さなスケールにおいて成り立つ力学について学ぶのが、量子力学・量子物理学です。

現代の機械の加工はマイクロやナノといった、原子レベルの非常に小さな加工が可能になっており、それらの加工のために原子レベルでの物体の振る舞いの理解が不可欠になっています。

マイクロ加工やナノ加工は集積回路のチップをはじめとした機械加工でなくてはならないものであり、マイクロ加工・ナノ加工の分野での研究開発を行うときには、量子力学の知識が必要となる場合があります。

 

⑧安全工学

機械や工業製品を作る際に重要となる、安全について学ぶ学問です。

どのような機械であったとしても、機械には安全性が求められます。

例えば、工場の機械が故障や誤作動を起こす度に事故が起こってれば、そのようなものを継続的に安心して使うことなど到底できません。

設計の段階において、安全に使うことのできる機械が求められるのです。

このような、機械に関する安全性や危険性(リスク)について学び、その対処法(リスクマネジメント)を学ぶ分野を安全工学と呼びます。

 

ここまで挙げた分野は、機械工学科や物理工学科で学ぶ代表的な分野です。

もちろん、これらの分野をさらに深く学ぶ場合や、情報や電子回路などの他の分野を更に学ぶ場合もあります。

 

 

進める研究分野も多種多様

幅広い分野における基礎学問を学ぶ機械工学系・物理工学系ですから、その先の研究分野も多種多様です。

機械の設計や開発に関する研究をはじめ、その基礎知識を活かすことで生命現象や医療に対する工学的なアプローチを行う研究もあります。

また、工学的な応用を目指しての物理現象そのものの理解を目的とした研究も、機械工学や物理工学における非常に重要な研究分野です。

 

また、この研究分野の多様性からも推察できますが、社会においても機械工学系・物理工学系の人材の需要は高く、就職においても多様な選択肢があります。

一見機械とは関係のないような企業でも、機械を使って何かを製造している企業が機械工学系・物理工学系の人材を欲している場合は、案外多いです。

 

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機械工学科・物理工学科のイメージを具体化していこう

今回紹介した機械工学系・物理工学系で学ぶ内容は、大学によってやはり若干異なります。そのため、自分の興味ややりたいことに沿ってそれぞれの大学を比較することも不可欠です。

 

また、機械工学系・物理工学系の学生は幅広さゆえに、何をやっているのか、何がしたいのか、といった目的を見失いがちです。

もちろん、入って学びながらやりたいことを見つけるのも、もちろんいいでしょう。

ただ、どのような選択肢を取るにしても、全体像のイメージがあるのとないのとでは、雲泥の差です。

 

この記事を読んで、より機械工学や物理工学を近いものに感じてもらえると嬉しいです。

よりよい進路選択や、機械工学科・物理工学科で学ぶモチベーションを見つけるために、今回の記事が参考になれば幸いです。

 

この記事で疑問に思ったことがあれば、遠慮なくコメント、またはTwitterのDMを頂ければと思います。

 

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