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工学部だから語れる “面白さ” ことがある!
実は理科の教員免許を持っているtsuyoshiです。
高校生のみなさんが工学部での教員免許取得と聞くと、次のような疑問を持つと思います。
今回の記事では、これらの疑問に答えていこうと思います!
まず初めに、結論を述べようと思います。
●工学的な視点があると、理科がさらに面白くなる
●教育の捉え方の幅が広がる
なぜ、僕がこのように述べるのか? 順を追って説明していこうと思います!!
関連記事:コラム:総合大学理系で教員免許の取得過程とその実態!~工学部を例に~【高校生・大学1回生向け】
教員免許を取るには理科と教育、両方の知識・経験が必要
総合大学で教員免許を取るには、
専門科目とは別に教職課程を履修する
必要があります。
教職課程とは、教員免許を取るために必要な講義や単位のことです。
教員免許を取得する場合には、指定されている教職課程の講義をうけ、単位を取得する必要があります。
この教職課程で受ける講義の科目は、大きく次の2つに分かれています。
①教科に関する科目
②教職に関する科目
これらの科目では、どのような講義を受けるのでしょうか? それぞれ見ていこうと思います。
教科に関する科目の内容
その名の通り、教科(ここでは理科)に関する科目の内容です。
理科は物理・化学・生物・地学の4つの教科で構成されています。
この教科に関する科目の中では、これら4教科の基礎的な科目が必修科目になります。”基礎的な科目=高校までに学ぶこと” と考えてもらって大丈夫です。
また、それらの科目についての専門的な科目の単位が必要になります。こちらの科目は大学の専門科目のレベルになります。
つまり、理科全般の幅広い知識と、大学の専門的な知識の両方が求められます。
教職に関する科目の内容
教職に関する科目とは、教員として必要な知識や素質を養成するための科目のことです。
教員はどのような心構えでいるべきなのかといった内容や授業の設計をはじめ、道徳などの明確な答えのないような問いをどう教えるのかなどを学びました。
他にも、教育の歴史や他の国の教育をはじめ、子どもの心理・発達、学校現場での指導の仕方や課外活動など、教職に関する科目では教育に関するあらゆることについて学びました。
“実用” から広がる理科のおもしろさ
総合大学で理科の教員免許を取得することを考えるとき、 “工学部か理学部か” という選択肢があります。
この2つの学部で違うことがなにかというと、工学部では “実用” を考えるが、理学部では考えないという点です。
理科には物理・化学・生物・地学の4つの科目がありますが、そのどれもが現象としての面白さを持っています。
そして、理学部ではそれぞれの現象がなぜ起こっているのか? ということを突き詰めます。
一方で、工学部では、どのように現実社会を過ごしやすくするのかについて考えます。
そのための手段として、理科の知識用いて、機械をはじめとした工業製品や土木におけるインフラの設計などを考えます。
金属の変形や空気の流れを考えるような物理をはじめ、化学反応の速さや合成の方法を考える化学、バイオ燃料など素材として扱うことが注目されている生物、土木において地層など地形の形成について考える地学など、理科の4科目それぞれについて工学的な観点から捉えることが必要になります。
このとき、現象としての面白さだけではなく、「どうすればアイデアを実現できるか・実用に役立つか」という理科を “実用” するという観点からの生まれる面白さがあります。
このように理科の楽しさを、社会に役立つアイデアを実現するという楽しさという点に求めることができるようになり、理科の面白さが広がります。
このように、理科を工学・現象の両側面から捉えることで、理科の面白さをより広い観点から伝えられるようになります。
これは、学校現場で理科を教えるうえで、とても大きな魅力になります。
工学的な視点から教育を考える
工学を学ぶことで教育に活かされることは、理科の面白さを広げることだけではありません。
工学的な視点というのは、教育全体で役に立つ視点が多いです。
最後に、工学的な視点を教育全体にどう活かすことができるのか、考えてみましょう!
設計・生産から学ぶリスクマネジメント
多くの人が “リスクマネジメント” という言葉を聞くと、何らかの問題に対して、”リスクを0にすること” や “リスクが起きる要因を取り除くこと” を考えます。
実際に学校現場において取られるリスクマネジメントは、問題が起こる原因となるものを徹底的に排除していくものが多いです。
例えば、SNS禁止やスマホ持ち込み禁止、深夜の外出禁止などが挙げられるでしょう。また、いじめや不登校といった社会問題化されて取り挙げられている問題も、その数を減らすことに主眼を置かれた施策がなされる場合が多いです。
結果、締め付けが多くなってしまい、息苦しさを感じる人が少なくないのだと思います。
では、設計や生産のリスクマネジメントの観点ではどのように考えるかというと、
●問題は起こるもの(大前提!!)
●問題が起こった時に、いかに正確に・素早く問題を検知することができるか
●問題が起こった時に、そのリスクを許容できるか。許容できるときは、そのリスクをどこまで減らせるか
というように考えます。
例として電車の自動ドアを考えましょう。
仮に、自動ドアが人や荷物を挟んでしまうという問題が起こることは容易に想像できます。
その時、自動ドアは人や荷物を挟んでいることを正確に、かつ素早く検知し、扉を開けます。
この問題において、許容することのできないリスクとは、”人が挟まれて死ぬこと” です。電車のダイヤが遅れることや、自動ドアが開いたまま閉まらないこと、扉の開閉が遅くなることは許容できるリスクだと捉えます。
そのため、”人が挟まれてもすぐに扉を開くことができる” “人が挟まれても死なないスピードで扉を閉める” という点には妥協をせずに設計を行います。
最初に述べたリスクマネジメントと設計や生産におけるリスクマネジメントが大きく違うのは、後者は “問題は起こるもの” という大前提を敷いていることです。
問題を素早く察知し、重大化させないことがリスクマネジメントの本質であると言えます。
この視点は教育においても活かせるでしょう。
リスクの原因をなくすだけでない、リスクを許容し減らすことが教育における余裕につながることも少なくないでしょう。
教育工学的な視点で考えられるようになる
“教育工学” とは、英語では “educational technology” と呼ばれ、よりよい教育を行うために、学びに関する要素を設計・デザインするという学問分野です。
ここでいう “学びに関する要素” は授業設計や指導方法、教具や教室設計など教育現場の中にある要素のことをいい、かなり広い幅を持っています。
このような教育現場を構成する要素は、複数の要素が絡まりあっています。そのため、よい教育をデザインするには、複数の要素を考慮した設計が必要があります。
ここで、工学における設計について見てみましょう。
空間や製品などの設計の最適化手法の研究は、工学の分野ではかなりの積み上げがある領域です。つまり、最適化のための手法や考え方にもかなりの積み上げがあるということが言えます。
そして、工学における設計でも複数の要素がトレードオフ(=1つの要素を強くすると、他の要素が弱くなること)な関係があります。そのため、複数の用を扱ってどうバランスをとるかに関する考え方はとても参考になるでしょう。
また、ICT技術などを活用して、教育に役立つものを実際に作ってみることもできるでしょう。
不便であればデザインすればよい、なければ作ればよいという考え方はまさに工学部的な考え方と言えるでしょう。
テクノロジーへの理解を教育に繋げる
工学部では、機械や材料、レーザーや微細加工など、ものを加工する技術やそれをどう使って社会や自然現象の問題を解決することができるかを学びます。
そのため、工学部では技術のバックグラウンドとなる原理の理解も必要です。
そのため、流体力学や熱力学、材料力学および制御工学などといった専門科目が設定されています。
このような知識がどう工学に結びついているのかを知っていると、世の中にあるテクノロジーを理解することができます。
そして、テクノロジーの発達は社会の変化に密接に関わっています。
そのため、テクノロジーを理解できることは、社会を理解することに繋がり、社会を理解することができればどのような教育が必要かを考えることに繋がります。
また、テクノロジーの変化は社会の変化と共に、教育にも変化を起こします。
教育の歴史を考えるときにも、社会的に(工学的に)何を理解している人材が求められているのかや、その時代には何が分かっていたから何ができたかということを考えることが必要です。
このように、テクノロジーを理解したうえで教育を捉えられることは大きく視野を広げます。
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教育に興味があるなら、工学部で教職を取ることも考えるべき
工学部で教職を取ることは、教育学部や教育大学に進学することに比べて回り道をしているように感じるかもしれません。
しかし、教育も工学も、”人との関わり方を考える” という面では共通しています。そして、この問いに正解はありません。
正解のない問いに対して、多分野の視点から考えることができるというのは非常に大きな強みになります。
教育や人との関わり方について考えたい人は、工学部で教員免許を取ることを考えてみていいと思います!!