工学部の大学1年生はなにを学ぶのか?一般教養科目は工学を学ぶのに必要なの??

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tsuyoshi

工学研究科修士卒の在野研究者です。大学院では"力"に着目した細胞の実験をしていました。最近数理にも興味を持ち始めました。理科教育やサイエンスコミュニケーションの活動も積極的にやっていきたいと思っています!!

どうも、工学部のtsuyoshiです。

この記事では、大学1年生が受けることになる、”一般教養科目”の授業について書いていこうとおもいます!

関連記事:工学部化学科では何を学ぶの?どんな講義があるの?

 

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大学1年生の授業ってどうなっているの?

大学に入学して1年生になると、当たり前のことですが、大学の授業を受けるようになります。

しかし、多くの総合大学の場合、工学部や農学部など、理系の学部に入学後に1年生で受けることのできる授業は、”一般教養科目”と呼ばれる授業で、学部の専門的な内容ではありません。

じつは、専門科目と呼ばれる学部の内容の授業をうけるのは大学2年生以降なんです!!

なので、工学部に入学しても、工学に関する専門知識を学びはじめるのは少なくとも入学の翌年以降なのです。

 

やりたいことを考えて学部を選んだのに、入学してすぐにその勉強ができない⋯。 なぜ、専門以外の授業をうける必要があるの??

一般教養科目の授業では、なにを学ぶのでしょうか? 一般教養科目の授業は、専門科目や工学を学ぶために必要なのでしょうか? 

工学部として、一般教養科目の授業を受ける意味について考えてみましょう!

 

一般教養科目ってなに? なにを学ぶの?

一般教養科目とは、大学の1年生が、学部の専門分野に関わらず、幅ひろい教養を身につけるために設けられている授業です。

一般教養科目の授業の科目は、大きく3つに分けることができます。

 

・外国語の科目

・人文社会学系の科目

・自然科学系の科目

 

に分けることができます。では、それぞれの科目の授業はどのような内容なのでしょうか?

 

外国語の授業では、英語や第2外国語の授業があります。第2外国語は、英語以外の言語の授業のことなのですが、よほどマニアックな言語でなければ、自分の好きな言語の授業を受けることができます。

また、人文科学系の科目では、哲学や教育学をはじめ、政治学や歴史学、経済学および文学などといった科目があります。人文科学系の科目は、自分で受ける科目を選ぶのが基本です。

さらに、自然科学系の科目では、数学の微分や積分、物理や化学といった科目があります。

 

しかし、工学部では、この自然科学系の科目を自由に選ぶことはできず、大学から受講する科目を決められています。

 

自然科学系の一般教養科目はどういうものだろうか?

自然科学系の科目は、なぜ受ける科目が決められているのでしょうか?

自然科学系の科目の内容をくわしく見ていきながら、その理由を考えてみましょう!

 

①数学

大学の1年生で学ぶ数学では、微積分や線形代数学を学びます。それぞれの内容をみていきましょう。

 

微積分では、偏微分や線積分、面積分といった高校までの数学をさらに拡張した内容を学びます。これにより、高校まででは主に2次元で行っていた微積分を、3次元で行うことができるようになります。

また、線形代数学では、線形という性質を扱います。ベクトルや行列が線形の性質をもち、その中で行列の基礎を学びます。

 

②物理や化学

大学1年生での物理や化学の科目で扱う内容を、見ていきましょう。

 

物理の授業では、古典物理や電磁気学を学びます。

古典物理とは、ニュートン力学のことです。高校までの物理の授業に学んだ内容に加えて、微分方程式の立式やテーラー展開による式の近似を学びます。また、電磁気学では、マクスウェル方程式という、ファラデーの電磁誘導の法則を含む電磁気学の基礎となる方程式について学びます。

加えて、量子力学の基礎を学ぶこともあります。例としては、量子力学の基本式の1つであるシュレディンガー方程式の解き方があります。

 

化学の授業では、主に熱について扱います。

高校まででは漠然と扱っていた”熱”というものを大学では、より具体的に考えます。大学1年生ではそのための基本的な概念である、エンタルピーやエントロピーについて学びます。

 

ほかにも、学科によってはこれらの物理や化学の内容に加え、有機化学や無機化学、作図の基礎を学ぶ図学などのような授業を受けることもあります。

 

大学1年生の自然科学科目は専門科目の役に立つのか?

ここまでで、大学1年生での自然科学系の科目の内容がどのようなものかを見てきました。

では、これらの数学や物理、化学は専門科目の学習の役に立つのでしょうか?

 

実は、専門科目は、高校や大学1年生までに学んだ内容を、それぞれのシチュエーション(科目)に応じてカスタマイズ(統合・発展)したものなんです!

 

数学が専門科目で用いられている例を見てみましょう。

流体力学において流体の運動量保存則を表す、ナビエ・ストークス方程式の導出の際には、ある空間に、同じ時間で流入する流体と流出する流体の運動量は等しいという式を、3次元の微分・積分を用いて立式します。

また、振動工学という、物体に周期的な外力を加えたときにどのような運動をするのかを考える科目で複数の運動方程式を立式したときに、立式した複数の運動方程式を行列で表すことで、その連立方程式が解を持つのかということを判断できるようになります。

 

物理や化学はどうなっているのでしょうか?

例えば、材料力学という、木や金属といった材料を変形させたときの変化について扱う科目があります。この科目では、運動方程式を使って梁などの形状を与えられた材料がどのような振る舞いを示すかについて考えます。そうして一度公式を導出したあとは、それを材料力学の公式として使って材料の変形について考えます。

他にも、熱力学と呼ばれる熱の移動や流れについての科目では、エンタルピーやエントロピーといった概念をもとに、熱の循環(サイクル)について考えます。それにより、気象における熱の移動や、熱のする仕事について考えることができるようになります。

 

このように、大学1年生で学ぶ数学や物理、化学は大学2年生以降で学ぶ専門科目の内容につながっています。

 

人文科学系の科目は工学部にとって必要なのか?

これまで見てきたように、自然科学系の科目は2年生以降の専門科目を学ぶために必要といえるでしょう。

しかし、哲学や歴史学といった人文科学系の科目が専門科目の学習に必要になるとは思えません。実際、専門科目を学ぶことだけを考えると、人文科学系の科目の知識は必要ないとおもいます。

 

では、人文科学系の科目を学ぶ必要はないのでしょうか?

僕はそのようには思いません。その理由は、

 

工学という分野は、”人と向き合う”分野でもあるから

 

です。

 

工学とは、誰かに使ってもらって、問題を解決したり人を豊かにしたりするためのモノを作る分野です。

このとき、作ったモノを ”誰に” ”どのように” ”どのような状況で” 使ってもらうのか考える必要があります。

 

例を挙げて考えてみましょう。

 

工作機械やロボットを作るとき、まずその機械でなにを作るのか、人がその機械をどのように操作するのかということを考えます。そして、次に機械にはどのような機能が必要で、どうすれば安全に機械を使うことができるか、使いやすいかということを考えます。

 

プログラミングを組むときは、そのプログラミングを使ってなにがしたいのか、ということがはっきりしていないと、プログラミングを組むことはできません。そして、プログラミングで解決する問題というのは、自然界はもちろん人間社会の現象をプログラミングを用いて扱うことも少なくありません。

 

橋や道路などのインフラの設計や工事をするときも、そこのインフラを安全に使えるのか、そのインフラで誰がどのように豊かになるのかを考えて作ります。

 

このように、工学という分野の中では、

作ったモノと人との関わり方や向き合い方について考えること

が大切になります。

 

工学部の基礎研究をしたい!というような人でも、大学を出れば社会のなかで働きますし、また工学系で研究職に就く場合でも、

自分の研究分野の背景を理解することは不可欠になります。

 

人文科学系の科目は、このように、人との向き合い方を考える”きっかけ”になります。

哲学では人がどのようなことを考えているのか、また考えてきたのかについて触れることができるでしょう。経済学や経営学では、世の中の仕組みやモノを作ったときにどのように人が豊かになるのかを違う視点で考えることができるでしょう。歴史学での、過去に人がどのような環境でどのような意思決定をしてきたかという知見は、今後の社会やモノづくりに役立てることができるかもしれません。

高校まででは詳しく触れなかった、触れてこなかった分野はたくさんあります。工学以外の分野でなにが行われているのかということを垣間見るだけでも、今後工学を学ぶときに、工学分野で学ぶだけでは得られない気付きがあるはずです。

工学以外の分野に触れたことが工学を学んだときの自分の成長の伸びを、さらに大きくしてくれるはずです。

人文社会系の科目の内容を完璧にする必要はありません。

困ったときやふとしたときに、自分を助けてくれるかもしれない引き出しを増やしておくことに、人文社会系の科目の意義があると僕は思います。

 

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視野を広げ、自分の学びにつなげよう!

工学部1年生で受ける一般教養科目は、専門科目の学ぶための知識的な素地を作るという点と、工学を学んだときの成長の伸びを大きくするという点で必要です。

人と向き合う分野である以上、自分の経験が役にたたないということはありません。むしろ、自分の経験を学びに活かすことが重要です。

自分には関係ない分野だ、興味がない分野だといって1年生で触れる科目をすぐに切り捨てず、ちょっとだけ触れてみましょう!その”ちょっと”が、数年後の自分の成長につながります!

 

しかし、2回生以上になるのは待ってられない!、1回生の内から専門の内容に触れたい!、専門の勉強をしたい!という人もいると思います。

そのような人は、興味のある分野の研究室にアポをとって、会いにいきましょう!研究の内容などについて話していただけるはずです。

関連記事:大学1回生だからこそ研究室へ赴くべし~研究に興味がある人がとるべき行動~

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