微生物学では何を学ぶのか?学問のキホンから研究室選びで注意すべきことまで

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こんにちは、みるおかと申します。
普段は食品メーカーで研究職をしております。

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いただきライフ:食品や理系学問、科学トレンドなどのブログ

大学では微生物学(発酵、食品衛生など)を研究し、修士を卒業した後に企業へ就職しました。

生物系、いわゆるバイオテクノロジーの研究室は大きく3つに分かれます。

  1. 動物(細胞):再生医療や医学、化粧品、畜産など
  2. 植物:農産物生産やGMO、食品製造など
  3. 微生物:発酵や食中毒、食品衛生など

動物細胞…というよりも再生医療は、iPS細胞の発見以来近年最も”アツい”分野の1つでしょう。
その反面、京大の山中教授自ら資金繰りに苦労していることを明かすなど、研究費の問題がピックアップされています。

植物の研究は農学系で最もイメージされやすいでしょうか。研究結果が出るのに数ヶ月、長いと数年かかる反面、毎日の『お世話』自体はそこまで大変ではありません(例外あり)。

最後に私の研究分野でもある微生物。
今回は、微生物学の基本を解説しながら、微生物系の研究室に配属される時の注意点やメリット・デメリットをまとめていきます。

 

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主な実験分野

どのような研究をするのか

微生物の研究分野は、

  • 産業利用:物質生産(医薬品など)、食品製造(発酵)、環境浄化など
  • モデル生物:大腸菌や枯草菌、細胞・遺伝子研究のスタートとして
  • 栄養学・食品衛生:抗菌、殺菌、腸内環境、サプリメントなど

などに分かれます。

そのため、基礎から応用まで研究分野が広がっています。
農学・理学系の学部では必ず微生物学を研究するラボがあるでしょう。
一般の人は、食中毒など衛生面のイメージが強く、ネガティブな印象を抱きやすいですが、学問としてはむしろ産業利用の面から研究されています。

 

動物系、植物系との違い

微生物は数日もあれば試験管やプレート培地いっぱいに増殖するため、動物や植物と比較して変化を観察しやすい、すなわち結果が出やすいといえます。
実験回数をこなしやすいだけですが…

ただ、言い換えれば実験回数をとにかくこなすのが微生物研究とも。
3日に1回結果が出ることは教授も知っています。
その分、短期間で成果が求められやすいところがありますね。

 

微生物も数式で制御できる

工学部の生物研究(生物工学)では数式がたくさん出てきます。
物理や化学の学生は驚きますが、微生物や動物細胞も増殖もモデル式が存在します。

”単位時間(t)あたりの細胞(X)の増殖速度(dX/dt)は、初期の細胞数に比例するため…”
などなど…増殖速度、物質生産、栄養摂取、死滅などはすべてモデル式が存在します。
こういったモデル式から、医薬品や発酵食品の生産を制御するわけです。

こういった産業応用の部分までアプローチできれば、企業からの需要はさらに上がりますし、化学、製薬メーカーでも通用する知識をつけることができます。

 

微生物学の将来性や進路

企業からの需要は強い

微生物学は産業利用が進んだフィールドであるため、企業からの引きも強いです。
食品メーカーや製薬メーカーの研究職を希望する人が多く、実際に企業からも微生物学を学んだ学生が求められています。
私は転職を経験していますが、転職活用でも大学で研究した微生物制御や食品工学が評価されました。
研究職にとって、大学院での研究もキャリアの1つと言って良いでしょう。
良い研究ができれば、新卒に限らず、その後のキャリアに活かすことができます。

さて、微生物学専攻の学生には、他にも品質管理や、化学メーカーのライフサイエンス部門などに就職する人もいます。
遺伝子組み換え、発酵、医薬品生産、食品衛生などなど、微生物がキーポイントとなる仕事はたくさん。
バイオテクノロジーの中では就職に強い研究分野と言えるでしょう。

 

なぜ就職が厳しくなるのか?

ですが、これらは非常に狭き門です。
この点については、私もブログで問題提起しています。

【リンク】理系大学院生のリアルな就活とは!就職できない専攻と博士の闇を暴露してみる

総務省の科学技術統計を見るとわかりますが、そもそも企業の生物研究者の数は、他のフィールドと比べて圧倒的に少ないのです。
機械系や化学系と比較して研究者数が少ない反面、学生の数は多いと
結果、倍率だけが上がっているのが現状です。

 

研究室選びのポイント

ここまで書いたことを踏まえて、どういう基準で研究室を選べば充実できるかまとめていきます。
研究室生活から、その後まで考えて進路を選びましょう。

 

研究目的が明確であるか?

学会から論文発表、就職活動まで研究内容をプレゼンする機会が多くなります。
全ての研究には意義がありますが、5分や10分で伝えきるのはかなりのテクニックが必要です。

この部分で苦労している学生は多く、

『その研究は何に使えるの?』
『結局その研究の何がユニークなの?』

という部分を曖昧なままプレゼンしてしまうことがあります。

これは研究室選びでも同じで、研究紹介を見たときに、

  1. 目的は何か?
  2. どういう応用展開があるのか?
  3. どう社会に貢献できるのか?

という軸が明確になっていない研究室を選びましょう。

学問の中には、将来性が低い研究分野も存在します。
研究室に配属されても、ただの実験マシンになってしまうかもしれません。

研究の『意義』を、自分でもしっかり理解できる研究室を選びましょう。

 

『副産物』となる学問があるか?

大学院の研究は、新卒の就活だけではなく、転職活動でも評価されます。
私も研究職で転職を経験していますが、大学院での研究内容はどこでも聞かれました。

微生物学は企業からの引きも強い学問ですが、小ネタとして『副産物』となる学問があるとかなりお得です。
例えば、既述の微生物工学の分野では、汎用性の高いモデル式なども活用でき、化成品などの消費財メーカーのエンジニアなども視野に入ります。
バイオインフォマティクス分析化学の分野で微生物を研究するなら、統計やプログラミングなどを経験することもあります。

『スキルとして見た学問』という視点でも考えてみましょう。

 

ブラック研究室を避けるために|OB訪問だけはしておこう

微生物学は実験のサイクルが速いと言いました。
実験の回数を打ちやすいため、ハードな研究室では深夜まで、あるいは徹夜で実験を強いられる場所もあります。

研究環境は、必ずOB訪問でチェックしておきましょう。
その研究室ではなくでも、隣の研究室から、

『隣はいつも深夜まで電気がついている…』

なんて話が聞こえてくるかもしれません。

 

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おわりに

私は修士を卒業して研究職として何回か転職しています。
食品メーカーばかり渡り歩いていますが、いずれも大学で微生物学を修了していることが内定理由の1つになっています。
修論や学会発表、論文執筆の経験は『実績』として一生の宝になりますよ。

その1つとして微生物学はいかがでしょうか。それでは。

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