【『八月の銀の雪』 感想と書評】 理系が読んだ「八月の銀の雪」

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きりさめ

修士卒会社員【専門】生化学、生命科学【趣味】映画、読書【一言】レオパードゲッコーの男の子と住んでます。

本記事では2020年10月に発売された伊与原新による新著『八月の銀の雪』の感想・書評をご紹介します。

八月の銀の雪/伊予原新

不愛想で手際が悪い――。コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた真の姿とは(「八月の銀の雪」)。会社を辞め、一人旅をしていた辰朗は、凧を揚げる初老の男に出会う。その父親が太平洋戦争に従軍した気象技術者だったことを知り……(「十万年の西風」)。科学の揺るぎない真実が、傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。

本作は第164回直木賞候補となった本作は、表題作特別公開ページにて特別無料公開されています。

この機会に是非お読みください。

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八月の銀の雪 理系とーくメンバーの感想

ともよし
理系とーく代表/Ph.D./企業研究者

うるっと来ました。物語で、科学との出会い・学びを通じて、自分の中のもやもやを解決していく登場人物たち。まず理系・科学者として、科学が絡む物語を「面白いな」「勉強になるな」って楽しめました。また登場人物と一緒に科学を知っていくことで、僕も世界をより上手に捉えられるようになり、気持ちが明るくなりました。気付けば登場人物にはすっかり感情移入。最後には目頭が熱くなりました。科学を楽しむ作品として、心を軽くする作品として、そして純粋に物語を楽しむ作品として、すっかり好きになってしまいました。

 

アヤカ
医学系博士学生/神戸元町理系Bar「bms」元店長

収録されている五編全ての主人公が、それぞれの現代に生きること生き辛さを感じていて、とても綺麗とは言えない人間の感情が生々しく描かれているのにも関わらず、そんな閉塞感に光を差すかのように美しく壮大に描かれた科学のエッセンスが、主人公たちに新たな価値観を与え、みんな希望を見つけて前に進んでいく。読んだ後にはなんとなく心がポカポカして、とても世界観の綺麗な小説だと思いました。

 

さぶろー
農学系修士卒/医療機器研究者

この小説では、科学を通じて物の見方を提案されたことで、5人の主人公の心が救われていた。その理由は、主人公たちがそれぞれ出会う「科学を伝える人」が、科学を親しみやすく伝えていたからだ。彼らは抽象的な概念を多く用いていたが、理系的にもずれていると感じない、本当に絶妙な表現だった。
私は一人の理系、そして医療機器研究者として、科学による社会課題の解決についてある種の使命感を感じている。「科学は特別ではなく、人の営みの一部でしかないこと」を強く意識して、科学を伝えることができるようになりたいと思えた。科学者の端くれとして、こんなにも素敵な物語に出会えたことに感謝している。(note全文:日常に潜む科学に触れる

 

まろ
生物系博士学生

社会に悩みを抱える主人公が、サイエンスを通じて解決していく短編小説。女性であり大学院生であり就活生である自身の姿に重ね合わせることでより一層共感できた。自然が我々の生き方を教えてくれる、そんな素晴らしい物語だった。

 

 

きりさめ
生命科学系修士卒/医療系メーカー会社員

不安に飲まれそうな日々に、確かな小さい光を差してくれる短編集です。「真理を知りたいと思うのは自然なこと」「利益を求めてしまうのも人間の性」と、実益偏重の社会に生きる我々を穏やかに包んでくれます。外に出て人や物と「出逢う」ことのできない日々が続く中、本作で出逢えた新たな科学をdigるのも一つの楽しみになりました。「玻璃」で取り上げられる珪藻アートは是非、読了後に検索してご自身の目で確かめて下さい。

 

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八月の銀の雪 理系とーくメンバーの書評

理系のバックグラウンドを持つ3人のメンバーによる書評もあわせてお楽しみください。

それぞれが別の視点で捉えています。

書評①
by エンドウ
神経科学博士学生

科学に心を温められる、そんな物語を読んだことありますか?」
作品内での描写に着目した書評です。

書評②
by tsuyoshi
工学修士学生

「科学と私たちがうまく付き合って豊かになるために」
本作の文化的側面とサイエンスコミュニケーションについて触れています。

書評③
by Karin
化学系企業研究者

「世界の多様さを思い出す物語」
読後に思う世界の多様性について書かれています。

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