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どうも、日々細胞の世話をしているtsuyoshiです。
今回は、最近話題になることが多い再生医療について書いていこうと思います!
関連記事:再生医療の実現と課題 -皮膚・骨・細胞の再生医療概論と倫理-
目次
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再生医療は文字通り “再生” する医療
近年、「再生医療」という言葉をニュースやメディアで聞くことが多くなりました。
特にここ1~2年の進歩はすさまじく、iPS細胞で作成された組織を人間に移植する臨床試験が行われるようにまでなりました。他にも、2019年5月から脊髄損傷に関わる再生医療に保険が適用されるようになりました。
実際、再生医療でなにが行われているのかということについてはあまり知られていません。
そこでこの記事では、順を追ってこの疑問に答えていこうと思います!!
薬か細胞か。従来の医療と再生医療の違いとは?
①いままでの医療
自分が病気になったときのことを考えてみてください。
たいていの場合は、病院に行って診察を受け、薬を飲んだら数日で治りますよね。
ワクチンや抗生物質など、医療の歴史では多くの薬の発見・開発がなされてきました。古代でも、漢方などといった薬が治療に用いられてきました。
このように、人類史において治療は、薬による治療がメインでした。
また、近代では、人工呼吸器など、人間が作り出した機械により体の機能を代替するということも行われてきました。
しかし、薬や機械による治療ですべてが治るわけではありません。
例えば、老化により機能が低下した体の回復や、事故で損傷した脳の機能を元に戻すことはできないと言っていいでしょう。どれだけ頑張っても、老化を遅らせる、人工呼吸器で呼吸の機能を補うなどといったことが限界です。
(もちろん、移植という手段も考えられますが、移植を行うには臓器を提供してくれるドナーが必要なことを考えると、誰もが受けられる治療であるとは言い難いです。)
このように、今までの医療は、症状を抑える・遅らせる、または機能を人工物で補うということが行われてきました。
ただ、根本的な治療ではないことや、機能を補っても行動が制限されてしまうなどの限界がありました。
②再生医療
再生医療は “体を新しくして治す” 医療です。
つまり、体の中で、老化による衰えや事故によるけが、病気などによって機能が低下したり欠けている部分を新しく作りなおすということです。
私たちの体は、細胞によってできています。細胞が集まって、神経や筋肉などといった組織や、肝臓や心臓などどいった臓器になっています。
このような組織や臓器を作りなおすには、同じ材料を使う必要があります。
細胞
です。
つまり、細胞を使って欠けている組織や臓器を新しくするのが再生医療
です。
細胞によって治療をするというのが、いままでの医療との大きな違いになります。
細胞には種類がある
細胞とは、生物の体を作る “部品” です。先ほども述べましたが、たくさんの細胞が集まることで、人間の臓器や組織はできています。
そして、大事なのが、
細胞は体のどの部位を構成しているのかによって、その種類と機能が変わる
ということです。
細胞には部位によって、さまざまな種類に分かれています。
皮膚の細胞、筋肉の細胞、骨の細胞、血管の細胞、神経の細胞、、、、、、
これらの細胞は、違う部位の組織の細胞になることはありません。組織はそれぞれの部位に合った種類の細胞によって構成されています。
例えば、神経の細胞を筋肉に移植したら筋肉の細胞に変わる、なんてことはないということです。
“分化” する幹細胞
このように、組織を構成する細胞の種類は決まっています。
そして、これらの細胞は、人間の体から生きたまま取り出すことは困難です。
しかし、それを可能にするポテンシャルを持つのが、幹細胞と呼ばれる細胞なのです。
細胞は受精卵から分裂し、徐々にそれぞれの部位の細胞になっていきます。この、細胞の種類が分かれていくことを “分化” と言います。
幹細胞は、それぞれの部位の細胞に分かれる前の段階の状態の細胞のことです。(幹細胞にもいくつかの種類があります。)
そのため、幹細胞は分化する能力(分化能)を持っています。
図1 受精卵から体細胞への分化
再生医療は、この “分化” という性質を持つ幹細胞を用いることで可能になります!!
つまり、幹細胞を治したい臓器や組織を構成する種類の細胞に分化させ、その分化させた細胞を使って治したい部位を “再生” するのです。
iPS細胞は体の部位を構成する細胞を人工的に “戻す” ことによって作られた細胞です。
受精卵から体のそれぞれの部位の細胞になるまでに細胞に蓄積された情報を “リセット” することにより作られます。
(情報を消去・再構成するすることをリプログラミングと言います。)
図2 iPS細胞へのリプログラミングとiPS細胞の分化
こうして作られたiPS細胞は受精卵と同様に、さまざまな細胞に分化する分化能を持つ幹細胞になります。
それに加えて、iPS細胞はほぼ無限に増殖することができます。
これらの特徴を活かして、さまざまな種類の臓器や組織を再生する取り組みがされているのです!
幹細胞を使って欠損部位を再生する
このように、幹細胞の持つ分化という性質を用いることで、欠けている臓器や組織といった欠損部位を再生するのが再生医療です。
では、幹細胞を用いて欠けている臓器や組織を再生する実際の事例としては、どのようなものがあるのでしょうか?
ここではいくつかの事例を紹介します!
①幹細胞で組織を作る
組織を実際に作って再生を行う事例としては、幹細胞であるiPS細胞を用いて、網膜色素上皮(RPE)のシートを作成し、移植を行ったという事例があります。
網膜は感覚網膜と網膜色素上皮(RPE)から構成されています。
このうち、RPEが過剰な血管の新生によって傷つけられることによって、見ようとしているところが見えにくくなる、加齢黄班変性という病気が引き起こされます。いずれは失明にも至る病気でもあります。
この病気は加齢により起こるもので誰にでも起こり得ます。今まででは薬によって血管の発生を抑えることが治療のメインになっていました。しかし、傷ついたRPEを元に戻すことはできず、完全に治すことができませんでした。
そこで、iPS細胞を分化させた細胞を用いてRPE細胞でできた細胞のシートを作成し、それを患者の網膜に移植するということが行われました。
その結果、拒絶反応も起こらず、過剰な血管が産まれなくなりました。また視力に関しても、手術前の視力を維持しています。
※視力は維持される場合がほとんどで、回復するような例はまれです。
(参考資料:2017/3/16 理化学研究所プレスリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170316_1/)
②幹細胞を投与する
冒頭でも述べましたが、再生医療の1つとして、幹細胞を患者の血液中に投与するというものがあります。
具体的には、まず骨髄液中に存在している “間葉系幹細胞” と呼ばれる幹細胞を採取します。
それを体外で培養して増やした後、患者の注射によって患者の血液中に投与するというものです。
この治療法により報告されていることとして、脳梗塞や脊髄損傷の患者の症状の改善があります。
これは、間葉系幹細胞は損傷部位があると、その部位の修復を促進する(自己組織化を促す)性質があるため、脳梗塞や脊髄損傷で損傷した脳が修復されたためだと考えられています。
脳梗塞で半身まひの人が職場に復帰できるほどに回復したり、脊髄損傷で呼吸を人工呼吸器に頼っていた人が自分で呼吸ができるようになったりと、この治療法による回復は、今まででの医療では考えられなかった回復を実現しています!!
このように、再生治療の中には大きく分けて、体外で増やした細胞で作った臓器や組織を移植する治療と、体内での細胞自身に再生を促す治療の2つがあります!
(※2つ目の自己組織化を促すことによる治療は、再生医療と分けて細胞医療と呼ばれることも多いです。)
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再生医療の可能性は広がっている!
再生医療は現在、治験(治療の効果を確かめるためのテスト)に入りつつある段階です。ですので、国に治療の効果が認められるようになるのは早くても10年後あたりでしょう。
しかし、20年後には一般的に知られている治療法かもしれません。
このように、再生医療が治療方法の選択肢の1つとなる日は徐々にですが、着実に近づいてきています。
また、薬や医療機械もまだまだ発展を続けています! これらの研究や開発も、今後の医療の発達に向けての大切な仕事です。
今までの医療と再生医療、すなわち薬・機械による治療と再生医療による治療を組み合わせることで、医療の幅が広がり、さらなる医療の発展が期待できるでしょう!!
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