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こんにちは、国内化学メーカー研究員のさるぽてです。
今回の記事は、「今現在化学系の研究室にいて、就職も化学系メーカーの技術職で考えているよ〜」という学生さんに向けたお話になります。
毎日スッカスカになっちゃってるなあ」
それは、「危険物取扱者・甲種」という国家資格の勉強です。
この資格は一言で言うと、各研究所や工場等で爆発や火災のリスクのある試薬を管理する責任者になれる資格で、メーカー等で重宝します。
実は僕はこの資格のことを学生時代知りませんでした。知ったのは社会人になってからです。
既に学生時代にこの資格を取得していた同期が死ぬほど羨ましかったですね。
学生時代、の〜んびりシリカカラムかけてる間にさすがに他にやるべきことがあっただろう。なんで○ム○ムなんか・・・。
目次
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本題に入る前に今回の記事の注意点を
今回の記事のターゲットは卒業も就職もゴールが見えていまいち研究に対して力が入らない4年生や修士1年生です。
ただし。今回の話はどの学生に対しても100%勧めるものではありません。
わかりやすく将来の自分のためになることしたい。)
一方で執筆者にとってこの記事が世に出ることで最も危惧しているのは、今現在研究だったり英語だったり立派な課外活動だったり、王道に打ち込めている人が変なよそ見をしちゃうことなんですよね。
やるべきことをやってる人がこの記事を読んだくらいで志を変えるとも思わないところですが、
「今の自分、充実してるな!」って人はどうぞ理系とーくの別の記事でもお読みください(笑)例えばこの記事とかアカデミックの世界を知る人なら興味深いですよ。
国家資格・危険物取扱者とは
さて、本題に入ります。
そもそも今回の話題の中心、危険物取扱者という資格はなんぞやというと、危険物の取り扱いとその管理の責任者となれる資格です。(名前のまんま)
ただ、この「危険物」ってやつが世間一般からみて「危ないもの」と若干ずれているんですよね。
例えば爆弾にもなるトリニトロトルエンですとか、高校でそれと一緒に習うピクリン酸とかも危険物には分類されているんですけど、量次第ではただの鉄粉とかでさえも危険物に分類されます。
つまり、ここで言う危険物というのは、
何ミリグラム摂取したら死ぬとか、そういう人体に毒性があり有害という指標ではなくて、
引火しやすいとか、粉塵爆発の危険があるとか、工場や研究所における大事故の危険性を考慮されて分類された物質が対象なわけです。
というわけで、危険物を取り扱う人にはこの観点での専門的な知識が必要なのです。
さて、もちろん人の命に関わることですので、危険物に関する専門的な知識は従業員全員が熟知していることに越したことはないですが、全員がマスターしておくのは現実的には難しいですよね。
危険物の教育を受けてない人は薬品を使えなくなってしまいます。そうなったら大学の研究とか成り立たなくなりますね。学部生の授業で完璧に危険物を勉強するわけではないですから。
ですので、現実的な運用形態として以下のようになっています。
・混ぜたら爆発するようなものを一緒に置かないとか、一つの場所にどれだけ量を置いていいとか、万が一事故が起きた場合は各物質ごとどうやって消火するかとか、安全に危険物を使うために必要な法律や専門知識が定めてある。
・そしてその法律と専門知識をしっかり把握しており、職場が遵守していることに対する責任者を任命し、その責任者が監督していれば実際に直接取り扱う者の資格については問わない。
・ただしその責任者、監督者になれるのが危険物取扱の有資格者とし、試験の合格と定期的な講習が必要になっている
というシステムです。
現場の人全員が危険物マスターじゃなくてもいいけど、せめて一人は最低限のルールと知識を抑えた人を責任者に置きなさいね、ということです。
甲種は危険物取扱者の中でも最上位資格
実は危険物取扱者の資格には分類があり、
甲種
乙種(1〜6類)
丙種
に分かれています。ざっくりと言えば、甲種>乙種>丙種の順に取り扱える危険物の種類が多いです。
危険物自体が1類から6類まで性質ごと分類されているんですが、
丙種は危険物のうちガソリン、灯油等4類の中の一部のみ(そう、ガソリンや灯油も立派な危険物です)
乙種は乙種1類〜6類まで分かれていて、それぞれ対応する類の危険物のみ。(乙種4類なら4類の危険物のみに対する有資格者になれる)
甲種は全ての危険物を扱えます。
化学系企業に入ると甲種の取得を求められる可能性は高い
こうした危険物取り扱いに関する日本のきまりから、必然的に化学メーカーというのは危険物取扱者甲種の資格者がどうしても必要になります。そうしないと研究用に所有しておける試薬が非常に限られてしまいますから。
さて、そこで企業にとってシンプルに危険物取扱者ホルダーを増やせる手法の一つが若手の社員に資格を取らせることですよね。一回取らせればずっと役に立つし。
ちなみにうちの会社では配属後一年の間に、体感で大体8割くらいの化学系研究職同期が取得しました。試験自体は一年を通じて行われており、取得のタイミングは部署ごとばらばらでしたが。
もちろんどのくらいの人数に取らせるか等の方針は会社次第ですが、後述する準備講習では別の企業に入った大学時代の同期と偶然会ったりもしましたし、化学系の企業ならよくある状況なのでは無いかと思います。
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社会人で”やらされる勉強”は辛い
さてさて、僕もそんな危険物取扱者が各職場に必要な化学系企業で研究員をしております。
例に漏れずさるぽても「危険物取扱者甲種を取って来るように!」との指令を受けました。
まあ、現実的にはこうした資格の取得については新人に拒否権はありません(笑)
(先輩社員のようには仕事ができないんだから、せめて勉強くらいは一生懸命やらないといけません・・・!)
そしてこれが大変めんどくさい。
面白くはないし、別に日頃の自分の担当している業務に役立つわけではない。
平日を乗り越え、ようやく迎えた土日はテニスか家でゴロゴロしていたい。
かといって平日頑張るかと言われると、正直くたくたなのでそこに特にピンとこない法律を詰め込む作業なんてしたくない。
さらに、会社のお金を使って受けるので(そこは本来良い点なのですが)、試験に落ちると大変な悪目立ちをする。
うちの職場は皆真面目でほとんど落ちる人がいないので、落ちると「伝説」と呼ばれる文化でしたね。謎のプレッシャーですよ。
こんな状況で頭をよぎる後悔は、学生時代のスキマ時間の空虚さです。
どうせうだうだしてた期間あったんだからこれやってればなあという。
まあまあ、現在の僕にとっては考えてもしょうがないことです。
しかしまだ学生で、来年からメーカー行くよって方にとっては危険物取扱者試験の勉強に手を付けるのは一考の価値があると思います。
そしてそういう境遇なのであれば、やるべきは「甲種」の勉強です。
上述の通り、化学メーカーにおいてはそれ以外の資格(乙・丙)では不足ですから。
試験ってどんなの?勉強方法や所要時間は?〜さるぽての実例〜
と思い立っても、何をどうすれば・・・?という状況ですよね。
まずは受験資格のご確認を
まずは、受験資格あるか確認しておきましょう。実は日本人なら誰でも受けられるというわけじゃなくて、ある程度化学系のバックボーンがあることを求められるんですよね。(万が一ここまで読み進めていただいたのに資格ない方いらっしゃったらすみません・・・!)
こちらが危険物取扱者試験を管轄している一般財団法人 消防試験研究センターの出している受験資格要項です。
甲種危険物取扱者試験の受験資格
とはいえそれほど厳しいものではなく、化学系の学科を出ている人は自動的に受験資格があります。
化学系ではない人もこれまでに大学で取得した単位次第では受験資格があったりするので心配な人はよく確認してみてください。
試験内容は?
こちらもまずは消防試験研究センターのHPを見たら良いと思います。
3つのセクションに分かれていることがわかると思います。
1,法令
2,物理・化学
3,危険物の性質と消化法
そしてこのそれぞれのセクションで6割以上の得点が必要です。
解答方式は選択式なんですけど、それほど甘くはなく、甲種の合格率は30%程度と言われています。
「2,物理、化学」は高校化学をそれなりに理解しているのであればほぼノー勉でクリアできると思います。
しかし、残り2つはそれなりに勉強が必要ですし、特に「1,法令」が鬼門です。
すると次に気になるのが、どんな勉強をどのくらいやればいいのかですよね。
さるぽての勉強内容
試験の約一ヶ月前
準備講習を受講。協会が運営する、対策講座みたいのがあります。会社で受けさせられました。ここで一応公式テキストもゲット。公式テキストの勉強のしにくさを感じる。
試験の3週間前〜1週間前
もらった公式テキスト一通り読むが、これだけではまずいと判断し、こちらの問題集を購入。
ひたすら問題を解いて解説を読む、の繰り返し。一冊を2周しました。
それから並行してもう一点、大事そうだけど覚えられていない箇所を集めた自分専用のメモノートも合わせて作ってました。
今回特におすすめするのは自分で表を作成することです。
やってみればわかると思いますが、色々な単語と数字の組み合わせを覚えるのが大変なんですよね。
表を眺めていても覚えらんないんですけど、自分の手で作ってみると問題説いてる最中に、(あの表の右上のとこだな・・・)ってな感じで思い出しやすいです。
一週間前〜本番
一週間前の最後の休日は、HPの過去問を解く。
(ちなみに僕はこの時、合格ラインを下回りました笑)
あとは自分のメモノートを見返すだけですね。
結果としては全セクション8割くらいで合格できました。
結局どのくらい時間が必要なのか
これは正直人によりけりでしょうが、僕の場合は休日6日程度、あと平日のスキマ時間少々をかけました。
この休日6日に関しては1日6時間程度やっていたと思いますし、話を聞くと同期も大概似たようなもんです。
もちろん上記は他人にとっては目安にしかならないですけど、ただ、さらにこの半分の勉強時間で受かろうとなるとよっぽどの秀才か本番の運も絡むでしょうね。
それから、僕が初っ端に受講した準備講習は個人的には必須ではないかなと思います。特別有益な情報があるわけではなく、要は公式テキストのほとんどが出るよってことがわかっただけで、がっつりテキストを読み込めれば取り戻せる程度の差だと思います。テキスト自体もHPから買えますしね。
おわり:未来の自分のために検討してみては
次の社会人のステージに目が移ってしまって眼の前のことにやる気が出ない学生にとっては手を付けやすいんじゃないでしょうか。この記事では受験までの対策を書きましたけど、僕個人の意見としては、「触っておく」程度でも将来の自分にとってはありがたいんじゃないかと思いますね。
そういう意味では、就活で一度足が止まっちゃった人は兎にも角にも自己研鑽の歩みを再開することが重要だと思っていますし、その一歩にもなりえるんじゃないかな、というのが今回「甲種危険物取扱者試験」を勧める裏の真意です。
この思想で書いた研究室時代の僕の寄り道を書いた個人ブログの記事もあるので良かったら読んでみてください。
[…] 時々リライトしたり、理系とーくの方に記事を書いたりはしていたんですけど、この「ぽてはじめ」についてはさっぱりでしたね。 […]