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大学院生を中心とした、理系人が集まるメディアで記事を書いているものとしてどうしても触れておきたいものが…博士問題やポスドク問題というものです。
動画でも説明されているように、最高の学位「博士号」を取得しても、雇用が無く、その先の人生が真っ暗… というのが博士問題の概要だと思います。
ひと昔ほどではないと思いますが、博士号を取得しても、働き口が少ないというのは、いまだに日本が抱える社会問題の一つです。
この問題について、ネットサーフィンをしていたらとある記事に、強く感銘を受けたので、理系とーくでも取り上げます!
元記事はブログとかの記事ではなく、ケミカルバイオロジーで有名な 京都大学 上杉 志成 教授 が書いた記事です。
この記事の中で、「人の職を取る人じゃなく、人の職を作る人になってほしい」という言葉が出てきます。私自身強く感銘を受けた言葉なので、この記事のトピックにしてみました。
今後、博士号取得者がどう生きるか、どうあるべきかについて書いてみたので読んでみてください。
目次
博士(号)とは…
博士号とは、大学の学部を卒業して、博士前期課程に2年、博士後期課程に3年、行くことで取得できうる、最上位の学位です。
学部は勉強して、テスト受けて単位を取れば学士号がもらえます。
博士課程は、勉強した内容を活かして、研究して、新たな知見や技術を生み出す課程です。
結果がすべてであり、結果なしでは博士号はもらえません。
「博士号」がよくわからない人のために違いを教えます。
学士、修士、博士の違いは次の通りです。
学士(学部)は敷かれたレールの上を走る課程。(教科書を学習する)
博士前期課程(修士)は、レールを敷くお手伝いさん、見習い
博士後期課程(博士)は、レールを敷く予定を立て、実際にレールを作る人。
つまり博士とは…
博士=道(未知?)を切り拓く者
です。
この辺をまとめた記事
人類が今まで成しえなかったことを達成するのが博士なのですが…
多くの博士が、その能力を活かして仕事をすることができていないのが現状なのです。
一見、開拓力が何の役に立つの?と、お思いになるかもしれませんが、
開拓力がある人は、ゴールにたどり着くための計画力、周囲の人材の管理能力
に長けており、社会のどの場面でも役に立つことができます。
つまり、ルート設計のプロです。
日本が抱える博士問題・ポスドク問題
「高学歴プア」という言葉を聞いたことがあると思います。
その代表的なものが、ポスドク問題や博士問題というものでしょう。
ポスドクとは、大学の教員を目指すものが、研究室の研究員として在籍するものです。
現在の日本では、ポスドクになったものの、教員になることができないという問題があります。
ですが、それ以前に、博士号をとったのに仕事がないという問題も起きています。
そのため、ポスドク問題というよりは博士問題という方が正しいのかもしれません。
博士問題(雇用なき博士)
冒頭で紹介した動画の様に、必ずしも正確な数値とは言えませんが、多くの博士号取得者が行き場を失っているのが現状です。
ポスドクがあふれていること以前に、
博士号を取得しても無職者が生まれることが大きな問題だと思います。
また、2010年に 榎木 英介 医学博士が投稿されているreserchmapの「ポスドク問題、展望と課題」を見ていただくとわかるのですが、
(少し古いデータですが…)
とくに文系の博士取得者が行方不明で、理系は2割といった感じですね。
この行方不明者がいなくなることが大切だと思います。
ポスドクについては、次のパートで紹介します。
ポスドク問題
上でも述べましたが、ポスドクとは、大学の教員を目指すものが、研究室の研究員として在籍するものです。
大学教員を目指すものにとって、避けれない道といっても過言ではないものです。
reserchmapの「ポスドク問題、展望と課題」から一部抜粋させていただきましたが…
学部によって大きな差があるみたいです。理系分野の古いデータになりますが…医師、薬剤師、看護師、放射線技師、臨床検査技師などの保健学部関係のポスドクは、比較的ポスドクから教員になりやすい様です。また、保健関係は資格を持っていたりしますので、教員枠からあふれても、博士を持っている医療スタッフとして活躍できます。
しかし、理、工、農はそのようにはいきません。
こういう人達が、しっかりとした仕事に従事できる社会づくりがもとめられています。
博士の雇用が無い=宝の持ち腐れ
博士に仕事が回らないのは、博士というものが世間に認知されていないことに一因があるかと思います。
私自身そうでしたが、大学院に行くまでは、博士というものがどういうものなのかまったくわかっていませんでした。
なので、ここで博士の価値を。博士が国の発展にどれだけ貢献しているかという、わかりやすい例を紹介します。
博士=研究力
です。
”研究”が日本をどれだけ支えているかわかりますか?
家電、医療技術、自動車、農業技術、電子機器…
すべて研究から生まれています。
研究があるからこそ、日本はお金を得ることができるのです。
この研究を進めてきたのが外ならぬ、博士人材なのです。
日本を作ってきたのは、研究です。つまり、博士が日本を作ってきたと言っても過言ではないと思います。
その博士に活躍の場がない、博士にお金を回さないということが、
どれだけの新しい技術の芽を摘み取っていることになるかを、理解しておいていただきたいです。
ここまで、博士は被害者のような書き方をしていますが、当然博士にも問題はあったのではないのでしょうか?
以下、その点に触れていきたいと思います。
博士は、人の職を取る人じゃなく、人の職を作る人にならなければならない
ここで冒頭で紹介した記事が出てきます。
衝撃を受けたのがタイトルの言葉です。このタイトルは、上記リンクを貼った記事の最後に載っている内容なのですが…
「10人しか雇用が無いとしたら、人を出し抜いてその10人になろうとするだけじゃなく、10人を100人にする側になってほしい」
博士課程に行っている人であれば、この言葉の重さがわかると思います。
現状を変えるために、博士がやるべき仕事を考えてみよう
現状に不満を並べるのは、開拓者としてあるまじきこと。
政治的な問題もありますが、現状で博士の活躍できるフィールドが少ないのは、博士がその能力誇示しなかったことが原因でもあると思います。
この現状に危機を感じて、新たな研究機関を立ち上げる博士など様々な博士が生まれています。
理系とーくでも、新しい博士の仕事をプロデュースする人材を応援していきたいですね。
次のような活動を実際に行っている人がいたり、今後博士がやっていければなぁと思います。
研究機関を立ち上げる
博士が沢山いるのであれば、雇って研究を行えばいいとおもいます。
研究機関が少ないのであれば増やせばいいのです。
大学生向けの塾や予備校を建てる
この大学全入時代で、大学は最後の教育機関です。
なのに…そこで堕落していく人が多すぎる。
工学、理学、農学などの学部では、2-3年生の過程で多くの学生が堕落してしまいます。
このような大学生向けに、資格取得や単位取得をサポートする言えば予備校のような場を立ち上げると
大学生の質を底上げできると思います。
それをできるのが、大学生の上に立つ「院生や博士」です。
論文英語添削、教育業を行う
こちらは英語力が問われるのですが、大学院生に向けた英語教育を行うこともできると思います。
場合によっては、ネイティブも雇ったりして、論文の英文校正サービスを行うなど可能かと思います。
実際、英語スクールに研究職向けの講師がいたりしますが、極めて数は少ないです。
研究や最先端の情報を発信する
研究に初めて従事したした人とかよくわかるかもしれませんが、
教科書までの内容はネットに転がっているのに、その先、つまり最新の研究情報ってないんですよね。
日本人は英語に苦手意識を持つ方が多いので、研究情報の収集に時間がかかってしまいます。
そこで、最新の研究情報が日本語で集まるメディアがあると、日本人の遅れを解消できると思います。
これこそ博士号を持った人間でなければできない仕事だと思います。
理系とーくはそういうメディアになることを目指しています。
(CMです)
本サイトを運営する理系とーくのLINEができました!
研究者・科学好きの方とつながれるイベントの情報等を配信します!
ぜひ友だちになってやってください。
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最後に…
博士の持つ能力を活かして活躍できる新たなフィールドを、少しながら考えてみました。
博士が動くことで、日本全体の能力が底上げできると信じています。
大事なことは、博士一人ひとりが活躍方法を考えることだと思います。
理系とーくのみんなをはじめ、博士ライターには、もっと博士の価値を周知できる記事を
博士のビジョンを考えた記事を書いてもらいたいですね。現実的でなくてもいいと思うので…
読んでいただきありがとうございました。
薬剤師の博士についても書いているので良かった読んでみてください。
なるほどー。
おもしろいね。
博士の能力を最大限に活かすためにできることをやるって発想はすごいね。
確かに今の日本の研究機関の博士の扱いはその能力に見合っていない感があるね。
未来の博士を育てる教育者っいうのもいいよね。
この発想は、薬剤師のフィールドでも同じことができるんじゃないかと思って興味深く拝読しました。
のずえさん
理系と―くへの訪問ありがとうございます!読んでいただきありがとうございました!
薬剤師業界のなかでも、院を経験した人にしかできないことを
常に考えて、行動を起こし、実現していかなければならないと思います!
姪が私立薬学部にいます。
大学が定員確保に必死だったため、推薦であっさり合格しましたが入学後、化学で苦しんでいます。
学費は私が出しており、留年即支援廃止と言っています。
本人も頑張っているようですが基礎がないので駄目なようです。
真面目な性格なので、あまり追いつめてもいけないと考える一方、経済的に留年分の学費までは面倒見きれません。
伯父として何か支援できないかと思い、その一環で登録する次第です。
よろしくお願いします。
TOMOさま
コメントありがとうございます。薬学部に入って化学で苦しむ学生さんはたくさんいらっしゃいます。私立大薬のシステムはよく理解しているので、こちらとしても何とかお力添えをしたいところです。
理系とーくでは、オンラインでの講義を始めようと計画しております。
これに参加していただければ、間違いなく勉強の手助けになると思います。
姪さんはパソコン(カメラ付き)とかはお持ちで、ネット環境も整ってございますでしょうか?
それから姪さん本人と連絡できればアドバイス等しやすいので、「理系とーく」または「化学系薬剤師」の存在をお伝えお願いいたします。